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2024.11.20

ライフ

“リノベ好き”のスウェーデン人トップモデルが日本で家を買ったワケ。空き家問題の救世主!?



新連載「実録、空き家改造計画」●全国にある900万戸の空き家。それは外国人の目から見たらお宝でもあった! リノベも日本も大好きなモデル、アントンさんが古民家の魅力といかにして空き家を蘇らせているのかを探る。
地方に限らず、いたるところで見かける日本の空き家。その数は現在900万戸にものぼり社会問題にもなっている。

そんな日本の空き家を買い取り、自らの手で日本×北欧スタイルに甦らせる外国人が今注目されている。スウェーデン出身のファッションモデル、アントン・ウォールマンさんだ。

世界のトップメゾンやコレクションでも活躍していた彼だが、今や日本に住み、空き家をフルリノベーションするまでになった。そして現在も4軒目の空き家リノベを手がけている。アントンさんが日本の家に惹かれるワケとは?

【写真10点】「日本の空き家を購入したアントンさん」を写真でチェック 
案内人はこの方!
アントン・ウォールマン●1992年生まれ、ストックホルム出身。19歳の頃からファッションモデルとして世界をまたにかけて活躍。数回の来日を経て、2019年より日本に移住。日本の空き家を自らの手でリノベーション、セルフビルドした様子をYouTubeでも配信し、2023年、『FREE HOUSES IN JAPAN』を自費出版している。Instagram:@anton.injapan

アントン・ウォールマン●1992年生まれ、ストックホルム出身。19歳の頃からファッションモデルとして世界をまたにかけて活躍。数回の来日を経て、2019年より日本に移住。日本の空き家を自らの手でリノベーション、セルフビルドした様子をYouTubeでも配信し、2023年、『FREE HOUSES IN JAPAN』を自費出版している。Instagram:@anton.injapan


世界を飛び回り、NYに憧れたトップモデル

はじめまして、アントン・ウォールマンです。現在、東京に住んでモデルの仕事をしながら、家のセルフDIYにも熱中するスウェーデン人です。

僕はスウェーデンの首都・ストックホルムで生まれ育ち、19歳でモデルとしてのキャリアをスタートさせました。スウェーデン国内はもちろん、パリ、ミラノ、ロンドンをはじめトップブランドの仕事であちこち飛び回ってました。

イタリアにはよく行きましたが、カルバン・クラインやダンヒル、アクネ ストゥディオズ、H&Mといったブランドのコレクションやプロモーションの仕事が多かったです。ヨーロッパは狭いので、当時はストックホルムに住みながら仕事のときに移動していました。


2013年から2年間はグッチのエクスクルーシヴ(専属)モデルとしてランウェイを歩いてました。モデルの仕事はとても刺激的だしクリエイティブな人たちからインスピレーションも受けてました。それが今のDIYに生かされてるところもありますね。



アメリカ、特にニューヨークにはずっと憧れがあったので、一度は住んでみたいと思ってました。結果的には2年間住みましたが、ニューヨークの街は魅力的だし楽しいけど住むのは大変。物価も高いし、仕事も暮らしもすっごいタフで、ずっと動いてないといけないような感じでした。

短期滞在時には男性モデル4人でネズミが動き回るアパートの部屋に寝泊まりしていたので、食べ物は齧られるし夜になるとガサガサと徘徊するしで寝るに寝られないこともありましたからね(笑)。ずっと憧れていた街だけど、将来的に住みたいとは感じなかったのが正直なところです。


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はじめての日本は六本木

2024年にセルフリノベした、中野ハウスのダイニングにて。

2024年にセルフリノベした、中野ハウスのダイニングにて。


日本に初めて来たのは2015年。このときもモデルの仕事で、2カ月ほどの滞在でした。それまでは日本のことは何も知らなくて、とにかく連れて来られたという感じ。

滞在したのは六本木にある(事務所が用意した)モデルアパートでしたが、それまでの経験からニューヨークのような環境を覚悟してました。いろんな国に滞在すると比較できるようになるんです。

でも日本の部屋は小さくても綺麗だし治安も良い。どこでも美味しいものが食べられることにも、日本人の礼儀正しさにもびっくりしました。当時は六本木と渋谷くらいしか知らなかったけど、お気に入りの店に通ったりして、日本の文化も好きになりました。東京は優しい街だと思いました。

アントンさんのリノベハウスは和室のいいところは活かして日本と北欧スタイルを取り入れるのが特徴的。

アントンさんのリノベハウスは和室のいいところは活かして日本と北欧スタイルを取り入れるのが特徴的。


その後も2回、六本木のアパートに滞在しました。2度3度と過ごすうちにもっとこの国の文化に惹かれていって、帰る頃になると、「もう少しいたい」「まだ帰りたくない」と思うようになってたんです。「いっそのこと日本に住もう」と決めて、2018年の末に来日しました。

その頃には日本語もほぼ独学で習得していましたが、さすがに家を買うとまでは考えていませんでした。

日本は部屋を借りるのが大変……なら買ってしまえ!



来日した当初はシェアハウスに暮らしていました。やっぱり自分だけの家がよくて賃貸物件を探したのですが、外国人として日本の賃貸物件を借りると賃料以外にも保証金とか色々かかるし、システムもよくわからなくて。海外だったらオーナーと直接交渉できるけど、日本は違います。

例えば、前金として半年分を先に払うところもあれば、保証人が必要だったり、鍵の交換代だったり……といろいろかかる。何より「礼金」という、返ってこないお金を払うことも海外ではあり得ないのでびっくりしましたね。日本ほど部屋を借りるのに複雑でお金がかかるところもないです(笑)。



それで、もう借りるんじゃなくて買ったらいいんじゃないかと思って。今思えばクレイジーなアイデアだけど、日本が好きで、長く住みたいという気持ちの表れだとも思います。その頃はまだ日本に移住して1年も経ってなかったけど、三軒茶屋のボロボロの中古マンションの一室を1400万円で買いました。

そのとき、買えば自分で好きにDIYリフォームできるんだって気付いたんです。僕は子供の頃からリノベやDIYに親しんでいたので、いつかやろうと思っていたことを思い出したんです。



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スウェーデンではDIY&リノベは当たり前!?

ストックホルムの自宅で、お父さんと一緒にセルフリノベをするアントンさん。

ストックホルムの自宅で、お父さんと一緒にセルフリノベをする幼少期のアントンさん。


僕の実家、ストックホルムの家は築120年でした。スウェーデンではDIY精神があるので、自分でリノベーションするのは当たり前。うちは父がよくセルフリノベーションをしていたので、僕も子供の頃から手伝っていたし、身近でした。

実はスウェーデンでも一度DIYリフォームをしたことがあります。モデルを始めた20歳の頃、ストックホルムにあるボロボロのマンションの一室を買って、キッチンのDIYリフォームを3カ月かけてやりました。

幼少期のアントンさん。○歳頃からリノベを手伝っていた

幼少期のアントンさん。3歳頃からリノベを手伝っていたという。


大人になって自分でDIYをしたのはそれがはじめてでしたね。その後は海外を転々としていたので、チャンスがなかったですが、またいつかやりたいとは思っていました。

その“いつか”が日本でやってきた感じ。日本の中古マンションの一室は3〜4カ月かけてセルフリノベしました。やっぱり僕はスウェーデンの育ちなので、光を取り入れるスカンジナビアの要素も取り入れたデザインにリフォームします。



リノベは一度やるとまたやりたくなっちゃうんです。最初は中古マンションでしたが、2軒目からはかなり年季の入った空き家を購入してセルフリノベを続けてます(笑)。今リノベしている空き家は4軒目。日本家屋のいいところも残しつつ、日本とスカンジナビアの融合で「ジャパンディハウス」と名付けて、安上がりで素敵な家に蘇らせてます。

アントンさんのリノベハウスはこちら!



佐藤ゆたか=写真 池田裕美=取材・文

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