コント、服、小説の創作に共通するもの
ーーコントのネタ作りと洋服を作ること、選ぶことには共通点があるのでしょうか?又吉 以前「詩を読む会に老夫婦が初めて参加する」っていうコントを書いたことがあって、衣装さんに発注せず自分で古着屋を回って、おばあさんのワンピースやスカーフ、おじいさんのシャツやパンツを探したことがあります。
おばあさんは詩がすごく好きなんですけど、そういう会には行ったことがないからおじいさんを誘って初めて行ったという設定。心の底から湧き上がるものを言葉にする本物っぽい2人が現れて、周囲が戸惑うという話で。普通ならハンチング帽や老眼鏡、ループタイといった記号的なアプローチになりがちなんですけど、それじゃ説得力が出ない。簡単には思い浮かばないような、絶妙な感じのものを選びました。
ーーその絶妙さが説得力を生むと。コントにおいて衣装は重要なんですね。又吉 衣装にこだわるコンビの僕らとしては、すごく重要ですね。何でも自由にやりたいことをやっていいわけじゃなくて、説得力をもたせるためのルールがあります。登場人物が何を知ってて何を知らないか、こういう話し方をするタイプじゃないから、面白いボケを思いついても、その人に言わせたらいけないとか。それは小説にも通じます。誰が何のためにそれをするのか、喋るのかっていう必然性ですね。
服を作る時もそこは共通していて「自分がこのタイミングでジャージを作るとしたら?」っていうところまで1回降りて、一から考えました。
ーー最後に又吉さんにとってファッションとは何ですか。又吉 着る側としての視点で言うなら、自分で自由に好きなものを選べるもの。文学や音楽、映画と同じように、面白い人たちが工夫を凝らし、思いを込めて作っているもの、ですかね。僕はファッションを自己表現のひとつだとはあまり思っていなくて、あくまで買う側であり、着る側。作り手が形にした思いを受け取る側っていう感覚の方が強いです。
◇
取材の短い合間、矢継ぎ早の問いにも思考を巡らせながら答えてくれた又吉さん。「時代に流されないもの」「必然性を感じられるもの」という言葉が残るが、その面白さの本質は、今回制作されたジャージの細部にも自然に落とし込まれているのだろう。