
次に岩海岸の近くに建つ「道草書店」へ向かう。2022年にオープンしたこの店は、店主が散歩の途中で出会った高齢者から「書店がなくて困っている」という声を聞いたことから始まった。トランクに本を積んで巡る移動書店からスタートした経緯も、この町の軽やかさをよく表している。
全国でも珍しいまちづくりのルールブック『真鶴町まちづくり条例 美の基準 Design Code』(参考商品)。真鶴の景観を守るために1993年に作られた指針で、実は道草書店の建物もこの基準をもとに改修されている。
真鶴を舞台にした小説『真鶴』(川上弘美著/参考商品)は、道草書店でよく手に取られる一冊。読み終えた後、その不思議な余韻を語り合うまでが、この店のひとつのセットリスト。
店内に並ぶのは、ZINEなどのリトルプレスから郷土書、文芸まで。それらはジャンルではなく、日常の気づきといった関係性で並べられている。注文から届くまで1カ月かかることもあるが、その待つ時間さえも、店主との会話を楽しむエッセンスになっている。

また、店内奥の一箱本屋スペースも面白い。オーナーが自らの蔵書を販売する試みは、本を媒介にした地元のコミュニケーションのハブとして機能している。世間話の延長で今日の一冊が決まっていく光景は、人と人の間に心地よい余白を作るために本が置かれていることを教えてくれる。
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