
最後に訪れたのは、古民家を改装した「本と美容室 真鶴店」。美容室と書店が一体になった場所だ。庭に夏みかんの木が残る空間に、モダンな書庫が佇んでいる。
店舗の一角には六角形の書庫が設けられており、デザイン書から文芸、児童書まで幅広く並ぶ。
考えてみれば、美容室ほど本と相性の良い場所はない。ハサミの音を聞きながら、手渡された一冊に目を落とす。それは情報を得るためではなく、鏡の前で自分と向き合う時間を、より豊かにするためのものだ。
髪を整えることと、本を眺めること。そのふたつが重なるだけで、加速しがちな日常のリズムがふっと緩んでいく。
アタシ社刊行の美容文藝誌『髪とアタシ』のバックナンバーを揃える。

真鶴にはわかりやすい娯楽はない。だが、本が一冊あれば、ただの古い町並みが特別な風景に変わる。
スマホを置いて、あえて不便な時間の流れを楽しむ。そんな本を入り口にした滞在こそが、この町らしい時間の使い方だと思う。
OCEANS7月「Wellness is Wealth」号から抜粋。さらに読むなら本誌をチェック!