「NIPPON CRAFT QUEST」とは……▶︎
すべての写真を見る小田原・湯河原と巡り、最後に訪れたのは豊かな暮らしの気配が残る漁港の町・真鶴だ。
湯河原から海沿いの国道を北へ進むと、突き出したように広がる真鶴半島が見えてくる。クルマを走らせていると、風景の密度が少しずつ変わっていくのがわかる。
海の開け方、石垣の高さ、路地の細さ。それらが積み重なり、町はひとつの地形というより、生活の連なりとして目の前に現れてくる。
本を片手に、町を読み解く

かつてこの町から書店が消えた時期もあったが、今、真鶴では、本を介して土地の記憶を編み直し、新しい文化の形を作ろうとする動きが始まっている。その先駆けとなったのが「真鶴出版」だ。
2015年に移住した夫妻が営むこの場所は、宿泊を通じて町の日常を届ける“泊まれる出版社”。ゲストが町で一夜を過ごし、住民と同じ生活のリズムに触れる。町の中身を外へと出すその営みもまた、ひとつの「出版」の形と言えるのかもしれない。
こうした試みが、本を起点に多様な人々が行き来する、健やかな循環をこの町にもたらしている。
真鶴の歴史や産業、営みをフラットに編集したローカルブック『真鶴手帖』(2400円)。検索エンジンではだどりつけない土地の体温が丁寧に綴られている。
ここで一冊の本を手に入れた。真鶴町が発行する町案内読本『真鶴手帖』だ。店を羅列したガイドではなく、坂や路地の間にある距離感をどう受け取るべきか、といった視点を授けてくれる町の読み方の教本。
ページをめくるごとに、先ほど通り過ぎた道の解像度が上がり、ただの風景が意味ある場所へと変わっていく。外から来た者にとって、これほど頼もしい手引書はない。
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