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保存状態、サイズ、時代性……。全ての点が線で繋がった奇跡のGジャン

そもそも大戦モデル自体が、1942年から数年間しか製造されなかったため希少価値が高い特別なモデルとされている。加えて、当時のデニムジャケットは作業着で、あくまで消耗品だった。
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ハードな労働の際に着用し、着古しては捨てるようなものだったので、残っていること自体が奇跡的。そんな中でも、これほど保存状態が良いものが残っていること自体が稀なのだ。

バックルは「ヤスリバックル」と呼ばれるパーツを使用。46年製のデニムジャケットと同型の部品であることから、この個体は大戦モデルの中でも後期のものと推定できる。

バックルは「ヤスリバックル」と呼ばれるパーツを使用。46年製のデニムジャケットと同型の部品であることから、この個体は大戦モデルの中でも後期のものと推定できる。


また、当時のアメリカは極度の物資不足だったこともあり、仕様も簡略化されているのも本ジャケットの特徴。ちなみにS506XXEの「S」は「Simplify(簡略化)」の略だ。

特徴的なディテールとしては、ポケット部分のフラップやステッチの省略、フロントボタンの削減などが挙げられる。普通なら“コストダウン品”だが、今はその不完全さが評価に繋がっているのだ。
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ポケットのフラップは省略。また通常5つ付属するフロントボタンも大戦モデルでは4つに減っている。

ポケットのフラップは省略。また通常5つ付属するフロントボタンも大戦モデルでは4つに減っている。


そして本個体の最大のポイントが背面の仕様にある。通常の506XXの背中は一枚布で仕上げているが、こちらは背面が「T」字のように2枚接ぎになっている点。その見た目から「Tバック」または「スプリットバック」と呼ばれているのだ。ちなみに、サイズ「46」以上の大きいサイズからこの仕様となっており、ラベル部分には「E(=Extra)」が付く。

レザーパッチは、“S506XXE”とサイズ”46”のスタンプが読み取れるミントコンディション。ここまで綺麗に残っているのは稀だ。

レザーパッチは、“S506XXE”とサイズ”46”のスタンプが読み取れるミントコンディション。ここまで綺麗に残っているのは稀だ。


この仕様は生産期間が極端に短く、現存数がゼロに近いので極めて入手困難。加えて、前述の通りほぼ新品のコンディション、さらにファッション業界に広まっているおりからのビッグサイズブームにより、大きなサイズの個体の需要が高まっていることも本個体の価格に影響している。

同モデルのポイントの一つである「Tバック」。ちなみに通常の506XXでも、この仕様はほぼ見つからない。歪みのある生地感や不揃いな縫製も魅力。

同モデルのポイントの一つである「Tバック」。ちなみに通常の506XXでも、この仕様はほぼ見つからない。歪みのある生地感や不揃いな縫製も魅力。


今やヴィンテージデニムは、単なるファッションではなく文化であり、歴史であり、アートでもある。そしてこのS506XXE “Tバック”は、その頂点を象徴する一着だ。

5500万円という数字だけを見れば理解不能かもしれない。しかし実物を前にすると、その価値を信じてしまう空気が確かに存在するのだ。

オオサワ系=取材・文 箱島崇史=写真

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