▶︎教えて、看板店長!ルーツから味わう世界の料理住宅街が広がる千葉市の稲毛区、国道357号線沿いにある平壌冷麺店「ソルヌン」。韓国語で「正月の雪」を意味するその店は、2024年3月のオープン当初から行列ができる人気店だ。
ラストオーダーを過ぎてもなお満席のお店に伺うと、快活な女性が現れた。オーナーは北朝鮮の平壌出身の女性、文蓮姫(ムン・ヨンヒ)さんだ。日本でお店を出すまでのストーリーはまるでドラマの中の世界のようであった。
話を聞いたのは……
文蓮姫(ムン・ヨンヒ)さん●1991年、朝鮮半島北東部の元山(ウォンサン)生まれ、平壌育ち。在日3世。2016年に脱北し、韓国ソウルに平壌冷麺店「ソルヌン」をオープン。2024年3月に同店の日本店を千葉県稲毛区に開業した。現在第二子を妊娠中。
両親が子供の頃、日本から北朝鮮へ渡った
ヨンヒさんは北朝鮮の生まれだが、韓国出身の祖父母が1930年代に日本へと渡ったので在日3世である。ヨンヒさんの両親が子供の頃、在日朝鮮人への帰国事業で多くの同胞と共に日本から北朝鮮へと渡った。
「うちは電化製品も自転車もすべて日本製。学校では反日・反米教育はあるけど、お祖母ちゃんからも日本は親切な国だと聞いていたし、日本に親戚もいるし、日本に対して悪いイメージは何もなかったですよ。私は中学生の頃に平壌に移りましたが、両親のおかげで結構いい暮らしをしていました」。

平壌時代のヨンヒさんは『愛の不時着』の主人公リ・ジョンヒョクの婚約者として登場した、平壌出身の「ソ・ダン役」をイメージするとわかりやすいかもしれない。
「愛の不時着? 主人公も好きで何度も見ましたよ。ドラマに出てくる国境の町は軍人家族しか住めないので私は経験していないけど、(現実と)だいぶ似てると思いますよ。北朝鮮は90年代半ばに「苦難の行軍(=飢饉)」があって、その頃は市場などで子供から大人、妊婦さんまで物乞いしている人がいましたね。
ご飯は、いい暮らしをしている人たちは白米と野菜、スープ……時々、肉のスープもありました。貧しい家庭は白米とトウモロコシを混ぜて食べたり、もやし、じゃがいも、豆腐などが食卓に上ったり。肉は誕生日とか特別なときだけです」。
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