「NIPPON CRAFT QUEST」とは……▶︎
すべての写真を見る地中海を思わせる環境から生まれる土地の個性。テロワールを活かした岡山のうまいもんには、ほかに代えられない贅沢がある。
そこに、さらに時間を味方につけて味わいを深めた発酵プロダクトに宿るクラフツマンシップにも注目を。
土地の記憶を再生する山間のワイナリー
山間部に映えるモダン建築のような外観。
山道を抜けた先に突如現れるコンクリート造りの建物。標高400mのカルスト台地に立つ
「ドメーヌテッタ」のワイナリーだ。「地元で何かできないか、ずっと考えていました」。そう語るのは、建設業から転身した異色のドメーヌ主、高橋竜太さん。
2009年、かつて食用ぶどうが栽培されていたものの、20年近く手つかずだった土地に目をつけ、再生を決意する。石灰質の土壌、水はけの良さ、標高400〜500mの寒暖差。ワイン造りに適した条件が揃っていた。
テッタの主人、高橋竜太さん。
16年、念願のワイナリーが完成。設計にあたり、高橋さんが出した唯一のリクエストが「グラビティフロー」だ。ポンプの圧力ではなく、重力のままにワインを移動させる仕組みで、ぶどう本来の香りや味わいを守るための選択。醸造所にはそのための高低差が設けられ、工程に沿ってワインが静かに流れていく。
この土地の恵まれた条件を、ボトルに詰めるまで壊さないという姿勢は、ワイン造りの隅々まで貫かれている。
醸造所に灯るネオンアートは、現代アート作家、ダグラス・ゴードンとジョナサン・モンクの共作。ふたりの食事体験をベースにしたワードが時間差で灯る。石川文化振興財団の石川康晴さんらと相談し、この場所へ設置された。
その想いを可視化する役割を担ったのが、アートディレクターの平林奈緒美さん。ワイン愛好家でもある平林さんは、高橋さんの語るぶどうの物語や品種の個性をモノトーンのエチケットで表現。
そのデザインは、「ドメーヌテッタ」の顔として人々に認識されるまでになった。
ワインを贈る際、紙のボトルバッグでは味気ない。かといって、ボトルのままでは気が引ける。そんな場面を想定して生まれた専用の包み紙。平林さんらしい視点と配慮が行き届いたプロダクトだ。
地元で何かできないか。そんな問いから始まった高橋さんの挑戦は、土地の個性を活かしたワインとなり、このカルスト台地に実り始めている。
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