「そろそろフレアが来る」。10年越しに回収された店長の予言


そして今、村上さんが「公私ともに頼り切っている」と語るのが、ブーツカットモデルの「517」である。本格的に穿き始めたのは2〜3年前からだが、このモデルに辿り着いたのもまた、ある人の言葉がきっかけだった。
「13年前、ワイルド ライフ テーラーの店長が、ふと呟いたんです。『そろそろフレアの時代が来るんじゃないかな。そうなると、やっぱり517だよな』って。当時はスキニーやタイトなテーパード全盛期。僕は『へぇ、そうなんですか』と聞き流していました。でも今振り返れば、あの人の先見の明はすごかったなと思います」。


時を経て、その言葉が村上さんの中で現実味を帯びたのは、ショップスタッフとの何気ない会話からだった。
「ビオトープに置いてあったマルジェラのデニムを見て、『このフレア感、517っぽいよね』という話になったんです。その頃、僕自身もビッグシルエットのパンツに少し飽き始めていて、大人としての品やシルエットの美しさが欲しいと感じていました。
最初は他ブランドのフレアを試したのですが、背が低めの僕でも脚が驚くほど長く見え、スタイルが整う。これなら本家の517もいけるはずだ、と確信しました」。

今では、ブラックからインディゴまで、ウエストサイズ違いで複数本を所有。その日の気分や合わせるシューズによって、ミリ単位のシルエットを使い分けている。
「今日穿いているブラックの517は32インチ。以前は33インチをカットオフしてラフに穿いていましたが、今の気分はもう少しタイトでクリーンなもの。専門店でチェーンステッチの裾上げをして、モードなニュアンスを強調しています。
黒好きの自分としては、穿き込んでグレーっぽくなったものより、真っ黒な状態を保ちたい。だから色落ちしてきたら買い直す。それぐらい、この『黒い517』には全幅の信頼を置いています」。

一方、去年ヤフオクで手に入れたというトルコ製(2000年代)のインディゴブルーは、独特の「いなたい(野暮ったい)」青みが魅力だという。
「ただ、実はこれを買った当時、今より7キロも太っていたんです。30インチならいけるだろうと高を括っていたら、実際はパツパツで(笑)。そこから意地で痩せました。今は30、32、33インチと揃っていますが、次は29や31インチも手に入れて、サイズ違いでシルエットがどう変わるのか試してみたい。そんな実験的な楽しみがあるのも、このモデルの魅力ですね」
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