人生の相棒を超えた、自分そのもの
ウエストはオーバーサイズを選び、その分だけレングスは長く余るので裾をロールアップするのが荒谷流。「表側のブルーと裏面のグレーのコントラストが出るのも何か好きです」。
――年間300日以上もデニムとなると、逆に残りの60日にも興味をそそられます。デニムをはかない日には、何か特別な理由があるのでしょうか?荒谷 これと言った深い理由はありません。たとえば楽曲制作やレコーディングでこもる日であったり、自宅から現場に直行してすぐ衣装を着る場合、だるくて着替えるのが面倒なときだったり。起き抜けでスウェットパンツやショーツのまま出掛けちゃう(笑)。
足元は今日も履いているメレルの「ジャングル モック」が主力。またはスニーカーで、最近はニューバランスの登板が多いとのこと。「このソックスは自分のツアーグッズです!」。
――世の中には多種多様なファッションアイテムや素材があります。なかでも、そこまでデニムに惹かれるのはなぜですか?荒谷 勝負着にも普段着にも部屋着にもなる、こんなアイテムはほかにない。お洒落ではあるけれど、飾りすぎていない等身大なところが魅力的です。着る人によってデニムの表情や趣は違って見えるし、身につける人間のありのままを映し出して、生き様や人となりが如実に表れる洋服だと感じます。
どんなに上等で格好いいデニムでも素の自分が輝いていないと眩しさを放たないし、そのために自身を磨き上げる必要がある。憧れの偉大なアーティストたちがそうであるように、僕もデニムが似合うアーティストでありたいと突き動かしてくれるんです。
――最後に、荒谷さんにとってデニムはどんな存在でしょうか?荒谷 これからも一生はき続けるだろうし、捨てたり売ったりせずに死ぬまで手放さないし、将来に子供を授かるならば譲り渡したいと思います。
自宅でダラダラとグダるときや遊びに行くとき、クリエイティブな制作現場、カメラ前やステージに立つときなど、それぞれの場所で見せる僕の顔は違うけど、どの側面も荒谷翔大であり、どの場面にもデニムがある。もはや最愛の相棒、いや、自分の生き写しですね。⋯⋯なんて言ったら、ちょっと大袈裟かな?(笑)
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来たる次代の音楽シーンを担うZ世代の寵児。彼に刺激を与え、羨望の対象として挙がったデニムアイコンは、意外にも我々OCEANS世代が同じように影響を受けてきたアーティストたちの名前だった。
またヴィンテージの価格が高騰し、古着のポジションが大きく変わった現在においても世間や情報に翻弄されず、自身の中にある確たる価値基準に従って無垢にデニムを楽しむ。そんな荒谷さんの姿勢に、本来あるべきデニムとの向き合い方を改めて教えてもらった気がする。