OCEANS

SHARE

今はたまたま。上がるなら、落ちる覚悟もしています


advertisement

――2025年の流行語大賞に「ひょうろく」という名前がノミネートされるほど、注目を集めています。ご自身では、どう受け止めていますか?

ひょうろく 正直、あまり実感はないですね。名前を挙げていただけるのはありがたいんですけど、「いや、僕じゃないよな」という感覚のほうが強くて。

生活自体は何も変わっていなくて、普通に電車に乗って、スーパーに行って。そんな日常の中で「流行語大賞にノミネートされました」と聞くと、「え? なんで?」って思うほうが先に来ます。
advertisement

「やったぞ」という感じはまったくなくて、ひょうろくという名前が、勝手に一人歩きしているような感覚ですね。



――一方で、その場所に立てる人は決して多くありません。ご自身では、“運命”のようなものをどう考えていますか?

ひょうろく 昔は、自分は将来ホームレスになるんだろうな、くらいに思っていました。正直、今もその感覚が完全に消えたわけではないです。

たまたま今は仕事をいただいているけど、来年には全部なくなっている可能性も普通にある。今回のことも、自分が何かを成し遂げたというより、持っていた要素が、たまたま今の時代にハマっただけ、という感覚に近いですね。

――上がることがあれば、下がることもある。

ひょうろく そうですね。だから落ちるときも、一気に落ちると思います。それは正直、怖いです。

でも、だったらそのときも楽しめるようにしておきたい。お金がゼロになっても、それなりに面白がれる心づもりだけは、今からしておこうと思っています。



――人生そのものを、コンテンツとして捉えているようにも聞こえます。

ひょうろく 近いかもしれないですね。今さら普通のサラリーマンに戻るのも現実的じゃないですし。だったらもう、落ちるところまで落ちてもいい。そこまで含めて、自分の人生なのかな、と思っています。

――今日は突然お声がけしてしまいましたが、長い時間ありがとうございました。

ひょうろく 全然、大丈夫です。ファッション誌の取材は初めてなので(※取材時)、どんなふうに載るのか楽しみですね。


そう言って、ひょうろくさんはフードをかぶり直し、ゆっくりと歩き出した。人混みではない、静かな通り。足音だけが淡く残る街角で、その背中は驚くほど自然だった。

気負わず、飾らず、それでも確かに“今”の空気をまとっている。不思議と、しばらく視線を追ってしまう後ろ姿だった。

延命悠大=写真 池田鉄平=取材・文

SHARE

advertisement

次の記事を読み込んでいます。