「真夏は運転できない」。近年の気候で車事情も変化


三菱ジープは、決して利便性に優れた車ではない。窓の開閉やドアの取り外しのほかにも、自分でやらなければいけない作業がたくさんある。外した幌を付け直すのに15分はかかるし、冬場は車を走らせるために「暖気」という作業も必要で、それにも15分を要する。加えてクーラーも付いていない。近年の酷暑はいったいどうサバイブしているのだろう。

「いや、冗談抜きで、真夏はこの車のボンネットで目玉焼きが作れますよ。やったことないですけど(笑)。だから実はここ3、4年、夏の運転は控えてるんです。置いていた水はお湯になるし、運転しながら気を失いかけたことがあったので。あと、フルオープンで走る時はゴーグルを付けないと、虫が目に100匹くらい入ってきます(笑)」。
こう聞くと不便を超えて危険な領域である。それでも乗り続けるのは、深い愛があるからだ。
ハンドル右にある温風ダクト。山口さん「エンジンルームの温かい風が出てくるので、冬の運転は快適なんです」。

1953年に生産を開始した三菱ジープは、生産終了までの45年間、ほぼ原型を保ち続けた。令和には作れない車だと山口さんは語る。
「フロントガラスまでフルオープンに倒せる車なんて、いまはもう作れないでしょうね。安全基準で認められないと思います。だから、いま残っているジープの車体がすべて。僕はその稀少性が好きだし、時代が変わってもモデルチェンジをしない、ぶれない姿勢にも惹かれます。ミニカーで遊んでいた頃、なぜあそこまで自分の琴線に触れたのか。子どもながらに、そこに魅了されていたんだと思います」。

我が子が小さい頃は、近所の子供たちをジープに乗せていたそう。「お母さんたちまで『乗りたい乗りたい』って。当時はサファリパーク状態でした(笑)」と山口さん。
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