S.T,N.E.はKUWATA BANDみたいなイメージ

黄瀬さんが座っているソファもS.T,N.E.のもの。快適な中に、どこか温もりのある座り心地だ。
「簡単に言うとサザンオールスターズとKUWATA BANDみたいなもんですね」。
TRUCKとS.T,N.E.の関係性について訊くと、黄瀬さんらしいユニークな例え話になぞらえてこう答えてくれた。その真意を続ける。
「サザンはサザンとして続けながら、桑田佳祐としてソロもやる。どちらも同じ人間から生まれているけれど、音楽性は少し違う。
TRUCKとS.T,N.E.の間にも、ちょうどそんな距離感があるっていう。28年続けているTRUCKというものがあって、外見こそ違うけど中身は同じというか」。
TRUCKは創業以来28年間、シーンのトップに君臨し続ける唯一無二の家具ブランド。気づけば類似プロダクトは、あちこちで作られていた。これについても黄瀬さんは独自の言語で語る。
「僕はこの現象を”あんぱん化”と勝手に呼んでいるんです。
誰かが最初にあんこを入れたパンを作って人気が出たことで、他のパン屋が真似をして、それをまた誰かが真似をして、いつの間にかそれが一般化するっていう。
これは数年前から感じていたことなのですが、どんなに新しいものを考えても、今まで作ったのと横並びなものだと、自分で見て“トラック風やな”と思ってしまう。そんなのを商品にしてもしゃあないなって。だからいったん初心に戻りたくなったんです」。
木製のラックも、他の家具と同様にミニマムな作り。シンプルな中にも、優しさや温もりが漂う。
TRUCKを真似たデザインが、さらに別の誰かに真似されていく。その”横並び感”の中で、同じテイストを自分が足しても意味がないと感じるようになっていた。そんな中、自分が今、欲しいものを作って生まれたのがS.T,N.E.。見た目はこれまでのTRUCKのイメージとは大きく違う。
「先ほどもあったように、最初こそヘビーユーザーさんからは心配されましたが、それでもやっていることは同じ。長く使える丈夫さ、日常の道具であること、奇抜さではなく、“なんてことない佇まい”であることですね」。
よりシンプルに、より削ぎ落とした形で、自分の今の気分や感覚を出せる場所。それこそが、新たなエンジンを搭載したS.T,N.E.なのだ。
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