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2025.12.24

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「海はまだ可能性を持っている」。科学と社会が紡ぐ“ブルー・フューチャー”を海洋保全のリーダーたちに聞く


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連載「The BLUEKEEPERS Project」とは……

世界を舞台に海を研究してきた科学者と、日本の海を現場から支え続けてきた活動家。異なるルーツを持つ2人の女性が出会い、今同じ言葉で語るのは「海はまだ希望を持っている」という信念だ。

海洋学者ジェーン・ルブチェンコさんと、セイラーズフォーザシー日本支局代表・井植美奈子さん。彼女たちの対話から見えてくるのは、「守る」から「一緒に生かす」海の未来の新しいかたちだった。
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【写真8点】「海を生かす時代。科学と社会が紡ぐ“ブルー・フューチャー”を海洋保全のリーダーに聞く」の詳細写真をチェック

陸から海へ科学者を海へ導いた“偶然の出合い”


ジェーン・ルブチェンコさん⚫︎海洋生態学、気候変動、環境と人間のウェルビーイングの相互関係を専門とする世界的科学者。オレゴン州立大学名誉教授を務める。1996年から2006年まで米国国立科学財団(NSF)理事を歴任し、2009年から2013年には米国海洋大気庁(NOAA)長官としてオバマ政権の科学政策を牽引した。さらに2014年からは米国国務省初代海洋科学特使として各国で科学外交を展開。2021年から2025年まではホワイトハウス科学技術政策局にて気候・環境担当副局長を務めた。世界で最も論文引用数の多い生態学者の一人として、気候変動対策、漁業改革、沿岸生態系の回復、持続可能な海洋管理に多大な影響を与え続けている。


ーー過去に研究や調査でさまざまな海を訪れてきたと思いますが、特に印象に残っているエリアはありますか?

ジェーン どの海にも素晴らしさがありますが、特に好きな場所を挙げるなら2つあります。

1つは、フィリピンの「トゥバタハ国立海洋公園」。スルー海の真ん中に位置する保護海域で、何十年も漁が行われていない、手付かずの海です。サメが12種類も生息していて、捕食魚が多い健全な生態系が保たれています。色鮮やかなサンゴ礁と、生命の多様さにいつも心を打たれます。

2つめは、インドネシア東部の「ラジャ・アンパット」。フィリピンと並び、珊瑚礁の三角地帯と呼ばれる地域にあります。世界有数の生物多様性が豊かな海域で、潜るたびに自然の持つエネルギーと美しさを感じます。

インドネシア東部の「ラジャ・アンパット」

インドネシア東部の「ラジャ・アンパット」




ーー若い頃からスキューバダイビングなど海のアクティビティは楽しまれていたんですか?

ジェーン 実は、海の近くではなく、アメリカ・コロラド州の山岳地帯で育ったんです。5人姉妹で、子供の頃はいつも外で遊んでいました。ロッキー山脈の麓で釣りやハイキングをしたり、湖や小川で泳いだり。両親からは「あなたたちは魚なの?」と笑われるくらい(笑)。でも、本格的に海の遊び、スキューバダイビングを始めたのは、海洋生態学者になってからです。

ーーでは海洋生態学を学ぶきっかけは?

ジェーン 大学3年の夏に、マサチューセッツ州の海洋生物学研究所を訪れたことが転機でした。そこで初めて無脊椎動物を観察し、新しい世界を覗いたような衝撃を受けました。地球上の動物は34のグループに分類されますが、そのうち33が海に存在するんです。陸地では半分ほどしか見られないのに、海にはそれだけ多様な生命がいる。ヒトデやウニのように、陸上では出会えない存在を見て、「海はなんて豊かなんだ」と虜になりまして。以来、研究でもプライベートでも潜り続けています。
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