連載「The BLUEKEEPERS Project」とは……パタゴニアの名作「レトロX」が、約20年ぶりにアップデートされた。ただの素材刷新では終わらない。背景には、これからの時代にふさわしい名作とは何かを問い直す、デザインチームの静かな情熱があった。
そしてその進化は、ブランド全体の大きな挑戦、地球を再生へ導く革新へとつながっていく。パタゴニア日本支社 マーチャンダイジング 細野雅子さんに話を聞いた。
【写真10点】「パタゴニア『レトロX』が20年ぶりのアップデート!」の詳細写真をチェック名作「レトロX」が映す、時代の空気

きっかけは、ブランド全体で進めている素材刷新の流れだった。「どうせ素材を変えるなら、レトロXという存在自体を見つめ直そう」。そんな議論が早い段階から起こったという。
今回デザインを手掛けたのは、30年以上にわたり数々の名作を生み出してきたコートニー・フィリップス。’90年代から’00年代初期にかけて行われた、レトロXの改良にも携わった人物だ。
レトロXは、初代「レトロカーディガン」を防風仕様にして誕生した、いわば“世界初の防風フリース”。その歴史を踏まえ、今回コートニーが重視したのは“シンプルさ”だった。初期案ではポケットすら排したミニマルなデザインも提案されたが、「らしさを失いたくない」という声が上がり、最終的にはクラシックなディテールを残しながら現代的なシルエットへと進化した。

フロントはフルレングスのジッパー仕様で、冷たい風の侵入を防ぐウインドフラップが付属。寒くなってきた近頃に最適の一品だ。

Yジョイントスリーブにより、肩や腕の動きやすさが向上。左胸に横型ポケットが1つ、両サイドにはジッパーポケットが付きで、収納性も相変わらず文句なし。 身長180cm 78kg 参考サイズ:L
「長く愛されてきた形だからこそ、“これがパタゴニアのレトロXだ”と一目でわかる存在感は残したかった」。チームのそんな思いが、新しいレトロXのフォルムに息づいている。
シルエットは従来よりややオーバーに。動きやすく、街でもアウトドアでも馴染むちょうどいい野暮ったさが、今の空気にマッチする。また、カラーリングにもストーリーが。新色の「クレメントブルー」は、15年以上チームを支えたヨーロッパ担当マーチャンダイザー、クレメント氏の退職を記念して名付けられた色だ。
「USデザインチームの彼への敬意を示した、フレンドリーなカラーネームにしようって決めたんです」。

新作のクレメントブルー
注目カラーは他にも。’80〜’90年代のアーカイブをもとに、当時のパタゴニアらしさを現代的に再解釈した、ドライドバニラ、クラムグリーン、パープルトリムなど、往年のファンを唸らせるヘリテージカラーも登場している。

「メンズ・クラシック・レトロX・ジャケット」各3万7400円/パタゴニア(パタゴニア日本支社 カスタマーサービス 0800-8887-447)
パタゴニアのデザインチームは流行色を追わない。シーズンごとにテーマを設け、そのテーマから自然や人との「互恵関係」を探るのだ。
今季のテーマは“森と水”。チームはアメリカ東海岸・ニューイングランドを訪れ、実際の森や川を観察し、その色を水彩で再現したという。「パレットは最終的にパントン(PANTONE)カラーコードで指定しますが、根っこには“実際に見た自然の記憶”があるんです」。
パタゴニアの色は流行に左右されないからこそ、どこかずっと見ていられる安心感があるのだ。「ピカソの絵が何十年経っても飽きないのと同じように、真摯につくられたものは古びない」。そんな言葉が、チームの哲学を物語っている。
![ベストやフードタイプのジャケットも登場する。[右]「クラシック レトロX ベスト メンズ」2万7500円、[左]「メンズ レトロX フーディージャケット メンズ」3万4100円/パタゴニア(パタゴニア日本支社 カスタマーサービス 0800-8887-447)](https://images.oceans.tokyo.jp/media/article/53055/images/editor/13f4d83e25208dd806783e3e86c1f23152e18656.jpg?w=850)
ベストやフードタイプのジャケットも登場する。[左]「メンズ・クラシック・レトロX・ベスト」2万7500円、[右]「メンズ レトロX フーディージャケット メンズ」3万4100円/パタゴニア(パタゴニア日本支社 カスタマーサービス 0800-8887-447)
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