
ファッションシーンの変化は激しい。その波を敏感にキャッチし続けるアンテナは、業界のプロフェッショナルには欠かせない資質だろう。しかし、それだけでは長きにわたり最前線で活躍し続けることは難しい。
セレクトショップ「ベルーリア」代表の山越弘世さんは、若くしてヴィンテージブームを経験し、世界を飛び回った稀有なキャリアを持つ。市場の動向は熟知しつつ、それ以上に、日常に必要不可欠で、真に価値のあるものという視点でアイテムを見極める。
そんな山越さんのワードローブから、長年、一度も途切れることのないアイテムがある。それが、リーバイスだ。
【写真20点】「ショップ店主が行き着いたデニムの最適解」の詳細を写真でチェック 紹介してくれたのは……
山越弘世(やまこし・こうせい)●20代でシップスのバイヤーを経験後、渡伊。帰国後、2001年に故郷の桐生にてセレクトショップ「ベルーリア」をスタートする。2012年に鎌倉店、一昨年には京都にギャラリー&ショップをオープン。現在、「ベルーリア高崎」にてリーバイスを軸としたヴィンテージ品のほか、オリジナルコーヒーも味わえる『Vintage Cruise Vol.Ⅶ』を開催中(10/21まで)。また、11月15日(土)からは広島の名店「リード」とヴィンテージイベントを開催予定。2026年2月には京都にて熊本の名店、「ピープル」とのユニークな企画も画策中。http://belluria.net
501への“ジレンマ”を抱えながら、リーバイスをはき続けた理由
山越さんが育った桐生市は、古くから「織都(しょくと)」と呼ばれ、日本の生地作りを牽引してきた地。当然、洋服店も多く、ファッションに触れる環境は抜群だった。

「僕が生まれた頃はDCブーム全盛期で、人口10万都市なのにありとあらゆるブランドが揃っていたんですよ(笑)。アメカジや古着店はもちろん、ロカビリー系の店まであって、常に刺激的な環境でした」。
実家がブティックだったこともあり、ファッションへの興味は必然。しかし、同世代に多い「アメリカかぶれ」ではなかったという。

「もちろん501の存在は知っていたし、年齢を重ねるほどにそれが永遠の定番だということも理解していきました。近所のデニムショップでジーンズを買っていましたし、アメカジの通念も心得ていますが、のめり込んだわけではありません。どちらかというと昔から品のいい服が好きでしたね」。
にもかかわらず、彼のワードローブからリーバイスが消えることはなかった。それは、リーバイスがオーセンティックの代表格であるという確信があったからだ。

しかし、ここにも山越さんの葛藤があった。
「昔から、個人的に501がいまいち似合わないなって思っていたんですよ(笑)。コレクター目線ではなく、“洋服屋”として見た目の方を重視しちゃうから。だからリーバイスは、505の方が自分には似合うとずっと思っていました。
それでも最初から諦めたりはしませんでした。大きいサイズを穿いてみたり、ジャストサイズを試したりと、試行錯誤を繰り返しました。それこそが、リーバイスの持つ“引力”の為せる技なのでしょう」。
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