隠岐諸島で南国魚のバラクーダを目撃
島根県海士町の素潜り漁師、吉川岳さん。イタリアで開かれた「Slowfood NIPPON」に日本代表として参加した。
島根県・海士町で素潜り漁を営む吉川岳さんは、1日3〜5匹の漁で生計を立てる、独自の道を切り拓く。かなり少ない漁獲量で一体どのように生活をしているのだろう?
「隠岐諸島は本土から60km離れ、透明度40mの美しい海が広がっています。私の漁法は、自由に泳ぐ魚を一発で突く“魚突き”。魚にストレスを与えず、最高の鮮度で料理人に届けることで、1日3〜5匹を獲るだけでも生計を立てることができています」。
吉川さんが釣り上げたイシダイとヒラスズキ。魚を突く方法(脳を一発でしとめる)、出荷までの処理(水から出す前に神経〆、血抜きして水から出したらすぐに氷漬け)によって鮮度が長続きし、3週間経っても刺し身で食すことができるという。今回は熟成させ、さらに旨みを引き出した。
対馬の丸徳水産さんのアイゴ。藻場の海藻を食べるアイゴを、人が美味しく食べて活用することで、海の生態系バランスの回復と藻場の保全につなげている。
少量漁獲ながら品質に特化することで魚の価値を最大化している吉川さんだが、素潜りをするからこそ痛感する海の変化があるという。
「ここ5年ほど、サーモクライン
※が15〜20mまで深くなっています。10年前は2〜3mも潜れば冷たい海でしたが、今では30度以上の海域に耐えられる南国魚のバラクーダを目にしたこともあります。海水温の上昇で、サザエやアワビの餌になる海藻もどんどん減っているんです」。
まずは海水温を下げなければと、吉川さんは行政にかけあい、100年スパンでの長期プロジェクトにも乗り出した。
「海水温が劇的に上がっているのは日本周辺の海だけだそうです。かつては、海岸近くまで植わっていた松が杉に置き換えられたことで、湧水の力や保水力が弱まっているのが原因ではないかと考え、農業・林業・畜産などの関係者と一緒に自然を守る活動を目指し、行政に働きかけをしています」。
※湖や海などの水の中で、水温が急激に変化する層のこと。 4/5