
ジーンズの王様、アメカジの基本の“キ”、そして永遠のワードローブ。
リーバイスを語るうえで、これまで数多くの枕詞が使われてきたのは、それだけの確固たる理由があるからだ。だが、その歴史を“教科書”のように暗記するだけでは、ジーンズはただの服で終わってしまう。

グラフィックデザイナー出身で、現在はプランナーとして活躍する猿渡大輔さんも、かつてはそうだったという。しかし、リーバイスを愛する先輩たちの熱量に触れ、メンズファッションの深部に分け入ることで、ブランドの真の偉大さを実感するようになった。
今回は、そんな猿渡さんのワードローブに収まる、ストーリーに満ちた3本のデニムを紹介する。
【写真27点】「若手プランナーのリーバイス選びが面白い!」の詳細写真をチェック 紹介してくれたのは……
猿渡大輔(えんど・だいすけ)●フリークス ストアでの販売経験を経て、デイトナインターナショナルでグラフィックデザインや企画に携わる。その後、ゴードンミラーのディレクターとして認知度向上に貢献。2022年に独立を果たし、現在はさまざまなブランドや企業のプランナーとして奮闘中。
先輩に激推しされた、今はなき「ホワイトオーク工場」謹製LVC

故郷は千葉でも有数の古着の街。そして、父親はドレス畑のアパレル業界人。アメカジ、アメトラ、ドレスと、メンズファッションを概ね学べる環境は、まさにアパレル業界を志す者にとって理想的なものだった。
だが、彼が夢中になったのは原宿のユースカルチャー。ファッションも前衛的だったが、とあるセレクトショップとの出合いが彼の視界を一変させる。
「それがフリークス ストアでした。だけど当初僕は茨城発の個人店だと思っていて(笑)。そこでのアルバイトが、間違いなく僕の一大転機でした」。

そこで出会った先輩たちは、古き良きアメリカへの愛と知識の塊だった。彼らの話を聞くにつれ、父から譲り受けたヴィンテージアイテムの真の価値を知るようになる。
「アメカジを学べば学ぶほど、父が持っていたアイテムを思い出し『あれってもしや……』となることがよくあったんです。その先輩たちに当時、強く推薦されたのがこのリーバイスビンテージクロージング(LVC)の501でした」
猿渡さんは「半ば強制的に買うことになりました(笑)」と笑うが、今ではその先輩たちに心から感謝している。

「買わないと“非国民”と言われるほどの勢いで勧められました。おそらく1966年モデルをベースにしていて、この時期、ちょうど米国デニム生地の大手、コーンデニム社(旧・コーンミルズ社)のホワイトオーク工場が閉鎖されるタイミングだったんです。これは、そのラストロットのLVCなんですよ」。

ホワイトオーク工場の床は木のフローリングで、織るたびに軋む。その“軋み”が生む微妙な歪みこそがデニムに唯一無二の風合いを生む。先輩たちの熱弁と、そのストーリー性が猿渡さんを虜にした。古き良きモノの背景を知ることで、デニムはただの「服」から「文化」へと昇華したのだ。

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