西海岸ロードトリップの憧憬が詰まった「517」
先輩たちとの濃密な時間は、アメカジの知識を深めただけでなく、猿渡さんの「アメリカへの好奇心」を掻き立てる原動力にもなった。

「当時、フリークス ストアと交流があったロサンゼルスのプロサーファーやバイカーの旅を追うムービー上映会と、彼らのルートを辿った社長の写真展が国内で企画されたんです。僕はその運営担当に選ばれました」。
猿渡さんはまだ若く、彼らが話すピズモ・ビーチやサンタクルーズといった地名もチンプンカンプン。それでも、そのリアルなアメリカの熱量に一気に興味が湧き、イベント後、すぐに友人とロードトリップへ出かけたという。
その行動力は周りの信頼を得るきっかけとなり、猿渡さんの西海岸への想いは確固たるものとなった。

「西海岸を下から上までロードトリップして、『嫌いじゃない』って思ったんです。その後、NYにも行ってみましたが、なんだか『お呼びでない』空気があって(笑)。その旅でもリーバイスをはいていました。畏まることもないし、選択肢は豊富だし、『なんでお前がそれをはいているんだ』なんて言われることもまずない。ありがたい存在だなと」。


そんな西海岸での経験が背中を押し、購入を決めたのが、この517だ。
「アメリカへ行ったとき、みんな本当にクタクタなジーンズをはいていた。だから、この“空気”を手に入れたかったというのもありますよね。これをはいて海に行きたいなと」。
517は、フレアシルエットのモデル。多少ノスタルジックなムードを漂わせるが、フレア感が強い646と比べるとクセは強くない。猿渡さんにとっては、それが「ちょうどいい」バランスだった。


さらに、彼のパーソナルな事情も517を選ばせた理由だ。
「僕は足がデカすぎる(高校の時点で30cm!)こともあって、昔から細いパンツははかないんです。細いと脚の大きさがかなり目立つ。だけどフレアシルエットならごまかせるんです。いわば苦肉の策でしたが、これをはき、ビーチサンダルを合わせたとき、ビーサンが足の甲を覆うシルエットに安心感を覚えたんです」。
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