
海で生まれた水蒸気が雲になり、雨や雪となって山に降り注ぎ、森や里を潤しながら川となって再び海へと還っていく。
そんな壮大な自然の循環を、己の身体で感じるイベントがある。日本を代表するアウトドアブランド「モンベル」が手掛ける「SEA TO SUMMIT(シー トゥー サミット)」だ。
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2009年、鳥取・皆生〜大山でスタートしたこの試みは、いまや全国に広がる人気イベントへと成長。カヤック、自転車、登山という3つのアクティビティを“人力のみ”でつなぎ、自然とともにある生き方を問いかけ続けている。
このイベントが面白いのは、単にアウトドアスポーツとしてスリリングなだけではなく、「海・里・山」という日本の原風景そのものを味わい尽くせる旅になっている点だ。
潮風を浴びながら海を漕ぎ、田畑の景色を抜け、やがて険しい山道を登る。刻々と表情を変える景色のなかで、参加者は自ずと五感で自然を感じていく。

参加スタイルも実に自由である。3ステージすべてを一人でこなす「ソロ」、仲間と分担しながら挑む「チーム」、そして障がいのある方や体力に自信のない方でも、出来る範囲で参加できる「パラチャレンジ」。この誰も置いていかないという哲学こそが、SEA TO SUMMITの本質だ。
パラチャレンジ部門では、スタート時間をずらした定刻方式を採用。タイムアウトに怯えず、自分のペースで山と向き合えるよう設計されている。また、各ステージには乗り降りをサポートするスタッフが常駐し、カヤックでは伴走艇、スタート地点には車椅子対応トイレを備えるなど、細やかな気遣いがうれしい。
大会初日には「環境シンポジウム」も開催され、「人と自然の共生」をテーマに専門家やゲストが登壇。応援に来た家族や友人も一緒に学べる場となっており、単発のスポーツ大会では終わらせない広がりを持たせているのも魅力のひとつだ。

コース難易度は大会によってさまざまで、初心者向けのやさしい設定から、上級者を唸らせるハードなコースまで幅広く用意。レンタルカヤックを備える開催地もあり、初参戦のハードルが低いのも人気の理由だ。加えて、開催地域はどこも自然と食と温泉の宝庫。レース後にはご当地グルメを頬張り、湯に浸かる、そんな最高の体験を味わうことができる。
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自然と人との距離が加速度的に離れつつある今だからこそ、“海から山へ”を自らの力で辿るSEA TO SUMMITには、大きな意義がある。漕いで、走って、登って、味わう。このイベントは、自然と向き合う“環境意識の旅そのもの”なのだ。
直近の開催予定は兵庫県の予定。詳しくは下記をチェックしてみてほしい。
しそう 氷ノ山 SEA TO SUMMIT 2025
開催日:10月18日(土)、19日(日)
カヌーの聖地「音水湖」から、全大会唯一の未舗装林道のバイクコースを森林ライド。豊かな自然に恵まれた「しそう森林王国」の世界を満喫しながら、県下最高峰「氷ノ山」の三ノ丸フィニッシュを目指す。<環境シンポジウム>
日時:10月18日(土)13:50~14:35
定員:予約不要・参加無料でどなたでも参加可場所:波賀市民協働センター 基調講演:増原 直樹(兵庫県立大学 環境人間学部 准教授)「変化する地球・地域の環境~私たちにできる取組みは?~」<アクティビティ>
日時:10月19日(日)
定員:300名、特設サイトよりエントリーを。
場所:音水湖カヌークラブ ~ 氷ノ山 三ノ丸
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