ワーキングメモリーがもたらすビジネス的メリット
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――ワーキングメモリーを鍛えておくと、私たちの日常生活、特に仕事においてどんな良いことがあるのでしょうか?ワーキングメモリーは、ビジネスマンにとって“基礎力”と言っても過言ではありません。仕事の処理能力、学習効率、そしてコミュニケーション能力の向上に直結します。
――具体的には、どんな場面で使われているんですか?たとえば、会議中に複数の人の発言を記憶しつつ、要点を見つけ出したり、新しい情報を素早く理解し、既存の知識と結びつけたりする際に、ワーキングメモリーが活用されています。
また、企画書を作成するときも、さまざまな情報を整理する力、論理的な構成を組み立てる能力が求められますよね。これもワーキングメモリーと密接に関わっているんです。
――たしかに……日々の業務そのものですね。じつはこれ、ワーキングメモリーを中心とする“実行機能”が高い人ほど、統計的にも高い地位や職種につきやすく、貯金が多く、肥満が少なく、依存症になりにくいといった傾向が見られるんです。
――えっ、収入や健康にも関係があるんですか!?はい。子供の頃から鍛えるのが理想ですが、大人になってからでも十分に鍛え直せます。そして鍛えることで、忘れ物が減ったり、相手の話を正確に理解して返す力もついてくる。まさに、ビジネススキルの土台ですね。
――ビジネスパーソンにとって、ワーキングメモリーを鍛えない手はないですね。その通りです。ただし、“脳の容量には限界がある”と知っておくことも重要です。人間の脳は、せいぜい3つか4つのことしか同時に覚えて処理できないと言われています。だからこそ、ワーキングメモリーの容量限界を知り、一度に処理する情報量を調整することは、仕事の効率を上げる上でも有効です。
たとえば、複数なタスクの進捗状況や、担当者、期限などを同時に把握し、優先順位をつけながら指示を出したり、計画を修正したりする。これはまさにワーキングメモリーを使っています。ですが、状況に応じて複雑なタスクは分解して、一つずつ確実に処理していく……といった工夫がこれに当たりますね。
――なるほど。鍛えつつも、限界値を超えないような脳の使い方が理想なんですね。その通りです。ちなみに、間違い探しで鍛えられるもうひとつの能力として「空間認知力」があります。
この空間認知力が高い人は、多角的な視点を持つことができます。これは、ビジネスにおいて現状を客観的に分析したり、根本問題を見つけ出したりする際にも役立ちます。
さらに、親子で一緒に間違い探しに取り組むことで、お子さんの空間認知力を鍛えることにも繋がります。空間認知力は、図形の問題を解いたり、地図を読んだりする際に必要な能力で、STEM教育(科学・技術・工学・数学)の基礎にもなるんです。
「楽しい」が脳を活性化する! 効果的な取り組み方とは
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ー―せっかくなら、間違い探しの効果を最大化したいです。何かコツはありますか?主に2つの方法があります。
1つめは「アップレギュレーション」。これは、徐々に難易度を上げていく方法です。最初は簡単なものから始めて、慣れてきたらより難しい問題に挑戦していく、という進め方ですね。
2つめが「ダウンレギュレーション」。同じ問題を繰り返し解いて、スムーズにできるようになるまで練習するという方法です。
――同じ問題を繰り返すんですか? それだと、答えを覚えてしまって効果がないのでは……?それが違うんです。答えを覚えたつもりでも、何も見ずに完璧にスムーズに解けるようになるまでには、脳内の情報処理の回路がしっかりと形成される必要があります。
繰り返し行うことで、より効率的に、そして素早く答えを見つけられるようになる。この「スムーズに解ける」というプロセスこそ、脳にとって有効なトレーニングになるんです。
――最初は何分もかかっていたのが、何度か挑戦するとサッと見つけられるようになる。あれは脳が鍛えられている証だったんですね!その通りです。そして、最も重要なポイントは「楽しく取り組むこと」です。
楽しいと感じているときに、脳はドーパミンを分泌します。ドーパミンが分泌されると、学習効率が向上したり、記憶の定着が促進されたり、スキルアップに繋がったりと、良いことづくめなんです。逆に、ストレスを感じながら無理にやってもあまり意味がありません。
――じつは私、サイゼリヤの間違い探しが大好きで。10個中、8個までは見つかるんですよ。でも、残りの2個が激ムズで、めちゃくちゃストレスを感じます。そうですか。なかなか答えが分からず、そこから「う〜ん」と唸って数十分……なんてことも?
――はい、まさに。これも脳トレとしてOKなんでしょうか?正直に言うと、粘りすぎるのは時間の無駄です(笑)。粘っている状態こそ脳が鍛えられているようなイメージがありがちですよね。ですが、残念ながらその状態は前頭葉が活性化されているわけではありません。根性を鍛えたい、というなら多少意味はあるのかもしれませんが(笑)。
ーー時間の無駄だったんですか! 粘りまくってました……。じつは、「まだ諦めないぞ!」と長時間悩むよりも、思い切って答えを見てしまって、「ああ、そこだったのか!」と納得し、再チャレンジするほうが効果的なんです。
これ、意外と勘違いされやすいんですけどね。答えを見て再チャレンジすることで、脳はより積極的に情報を取り込み、学習を進めてくれます。
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