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2025.08.02

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BAD HOPの出身地、住みたい街上位……元祖ヤバい街「川崎」の今を潜入系ルポライターが解説


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「日常に潜む社会の闇」とは......

「川崎」という街に抱くイメージは各々で異なるだろう。人口155万人を誇る政令都市・川崎は東京都心部や横浜へもアクセスが良く、ベッドタウンとしても人気な街である。

一方、かつては労働者の街として知られ、ドヤ街や工業地帯も広がる。そんな川崎に20年以上前から足を運び取材してきた村田らむさんが、この街の新旧を語る!
案内人はこの方!
村田らむ●1972年生まれ。ライター、イラストレーター、漫画家。ホームレスやゴミ屋敷、新興宗教組織、富士の樹海など、アンダーグラウンドな場所への潜入取材を得意としている。キャリアは20年超え、著書も多数。自身のYouTubeチャンネル「リアル現場主義!!」でも潜入取材や社会のリアルを紹介している。

村田らむ●1972年生まれ。ライター、イラストレーター、漫画家。ホームレスやゴミ屋敷、新興宗教組織、富士の樹海など、アンダーグラウンドな場所への潜入取材を得意としている。キャリアは20年超え、著書も多数。自身のYouTubeチャンネル「リアル現場主義!!」でも潜入取材や社会のリアルを紹介している。

川崎は住みやすい街? 治安が悪い?


川崎市の話をしていると、女性編集者と僕とで抱く印象がかなり違うことがわかった。編集者にとって川崎は、「家族やカップル向けの人気タウン」というイメージであった。検索してみると確かに、住みやすい地域としてランキングにたびたび上がっている。
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ベッドタウンとしてファミリー層に人気だし、川崎駅に直結した大型商業施設の「ラゾーナ川崎プラザ」もあれば、アリーナなど、新しい施設も建設されている。そういえば僕も、2011年に開館した「川崎市 藤子・F・不二雄ミュージアム」にはたびたび訪れている。



対して、僕にとっての川崎のイメージといえば、「治安が良くない」「ヤバい街」というものであった。これは既に古いステレオタイプのイメージなのかもしれないが、そもそも僕が川崎を訪れるときはホームレス取材がほとんどだった。そりゃ、多少イメージが悪くなっても仕方がない。

20年ほど前、取材に行ったときには、川崎競馬場の周りにズラリとホームレスハウスが並んでいた。植木と植木の間に建てられているのだが、個性的な形をした小屋も多かった。

当時は、「競馬場でお金をすった人間が、そのままホームレスになって競馬場の周りに住んでいるんだ」と揶揄されていたし、実際にそういう人もいた。

川崎側の多摩川の河川敷に住んでいる人もいて、台風のあとに取材すると、「知り合いが流されたよ。今頃サメの餌じゃねえかな? まあ俺たちホームレスが一人二人死んでも誰も気づかないよ」などと自嘲気味に言うおじさんがいたのを覚えている。

そんなホームレスをひと晩単位で受け入れる施設、シェルターを川崎市が作った際は、社会問題になった。2000年代のことである。

今の感覚で言えば、「うちの近所にホームレスを収容する施設を作ってほしくない」とは少し言いづらいかもしれない。SNSなどで言ったら、差別だなんだで炎上してしまうかもしれない。ただ当時は、「うちの近くにできるのは反対だ!」という素直な意見が、今よりは言いやすかった時代だったと思う。ニュースにもなり、僕も雑誌の取材で話を聞きに行った。

そのシェルターは、もともとあった工場の施設をほとんど変えず、中にベッドがズラッと並べられたものだった。僕も実際に中に入れてもらったが、少し無機質な空間だった。ホームレスを受け入れる施設のはずなのに、「当日の夜は受け入れてくれない」「早朝に追い出される」など、評判はあまりよくなかった。そしてその施設は結局、いつの間にかなくなってしまった。
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