かつてのドヤ街は今……

肉体労働者が泊まる簡易宿泊施設、通称「ドヤ」は川崎にもある。簡易宿泊所が集まる街“ドヤ街”は、川崎駅から八丁畷駅辺りにかかるエリア、日進町と貝塚という場所にあった。
20年前に訪れたときにドヤに泊まったことがあるが、普通のドヤに比べて旅館っぽい雰囲気だった。ただ、管理人のオッサンが住人を怒鳴り散らしている声が延々と聞こえてきた。
「また、おしっこ漏らしやがって!! ぶち殺すぞ!!」。「すいません、すいません」。そんなやり取りを延々と聞き続けて、死ぬほどうんざりした気持ちになったのを覚えている。元々ドヤに住んでいる人たちの多くは肉体労働者だったが、仕事はせずに生活保護で暮らしている人も多く、現在はよりその傾向が強くなっている。住んでいる人のほとんどが老人だ。

その後、2015年の5月、日進町のドヤ2棟が全焼し、11人が死亡した火災があった。週刊誌に頼まれて取材で訪れたのを覚えている。事件直後だったので、警察や消防、マスコミが大勢いて、ピリピリした雰囲気になっていた。
火が出たドヤに住んでいたというお爺さんに話を聞いてみると、「ベニヤ板でできたような建物だから、今まで燃えなかったほうがおかしいんだ。違法建築で役所は追い出したがっていたができなかった。一度焼けてしまったらもう二度と建てられないから、役所は喜んでると思う。ひょっとしたら、役所が火をつけたんじゃないか?」と言っていた。

実際当時の7割以上のドヤは違法建築らしかった。現在もドヤ街はあるが、町ぐるみで再開発やリノベーションを行い、観光客が増えているという。元々は小さなドヤがあったりした場所も大きく再開発されて、火災があったドヤもキレイなマンションに変わり、街並みは大きく変わってきているという。
住人にとってはとても好ましいことだけど、古い街を歩くのが趣味な僕のような人にとっては少し寂しいことである。
火災で全焼したドヤの跡に建ったマンション。
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