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目覚めたご飯の本当の美味しさ

ある日、いつものように炊き立てのご飯をひと口食べたとき、鼻を抜ける甘い香りと、噛めば噛むほど口に広がる優しい甘みに目が覚めた。それまで「味がない」と思っていたのは、まだ白米の「本当の味」に気づかなかっただけだった! ご飯のひと粒ひと粒がツヤツヤと輝いていて、まるで宝石のように見えた。
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これはイタリアのトマトやオリーブオイルの感動と一緒だ。素材が持っているシンプルで力強い美味しさ。マリナーラやトマトソースパスタなど、イタリア料理にも食材の良さを活かした料理は多い。日本料理の精神は、一杯の白ご飯に詰まっていると気がついた。

それからは、石川県のお米「ひゃくまん穀」は僕の家に欠かせない。スーパーで赤いパッケージを見たら必ず買うようにしている(今のひゃくまん穀は赤いパッケージではなくなった)。白米のしっかりとした粒立ちと風味豊かな味わいが感じられるお米だ。
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今の僕にとって贅沢なご馳走は、塩むすびになった。梅干しや焼き海苔と一緒に白米を食べるだけで、心が幸せになっていく。イタリアでは考えられない卵かけご飯も美味しく食べている。マンマが愛情を込めて作るパスタのように、日本の家庭にはその家ならではの「ご飯のお供」があるのも面白い発見だった。



イタリアでパスタの茹で加減にうるさかった僕が、今ではお米の炊き加減に全力を注いでるなんて、昔のイタリアの友達が聞いたら笑うだろうな、と思いながら今日も僕は朝イチで炊飯器をセットしている。最近お米が高いよね、と言いながらも、お米を買うのをやめられない。

一杯の白ご飯は、僕にとってただの炭水化物ではない。日本の自然や歴史、神様と繋がるための小さくて神聖な儀式だ。今日も僕はありがたく美味しく、このひと粒ひと粒をいただく。


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マッシ=写真・文 池田裕美=編集

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