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仕事では通じるロジカルな言い回しも、家庭では「冷たい」「上から目線」と妻から指摘される。さらには、何気ない会話の中で「また黙ってる」「話、聞いてる?」とキレられる始末。
前編では、そんな“家庭での言語ギャップ”を解きほぐしながら、「感情のキャッチボールこそが夫婦関係の鍵」というテーマをお届けした。今回はその実践編。
「どうすれば相手の気持ちに寄り添った言葉が使えるようになるのか?」その具体的なスキルの磨き方に注目していく。妻の言葉のウラに隠されたホンネや、ありがちな夫の失言例、そして「ふさわしい言い換え術」まで、夫婦カウンセラーの高草木陽光さんから学んでいこうではないか。
【写真7点】「妻の機嫌がみるみる良くなる! 夫婦の危機を回避する、”家庭用フレーズ”の鍛え方」の詳細写真をチェック 聞いたのはこの人!
高草木陽光さん●「HaRuカウンセリングオフィス」代表を務める夫婦問題カウンセラー。自身の夫婦関係の葛藤をきっかけに「結婚生活の本質」を考え、2009年にNPO法人日本家族問題相談連盟の認定カウンセラー資格を取得。著書に『ホンネがわかる 妻ことば超訳辞典』(青春出版社)、『なぜ夫は何もしないのか なぜ妻は理由もなく怒るのか』(左右社)など。https://haru-counseling.com/
「なんでそれ言っちゃうかな」を回避! “家庭用フレーズ”に変換すれば、妻の反応は激変する

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—―夫たちが、家庭でまず意識すべきことは何でしょうか?これはもう、「何を言うか」より「どう聞くか」「どう返すか」のほうが、家庭では圧倒的に大切だと認識してください。
とくに家庭では「分かったつもり」がすれ違いの原因に。妻の言葉のウラにある本音を、丁寧に受け取る意識が必要です。
—―たしかに、「あれ、いま地雷踏んじゃった?」というときはありますね。でも、何がダメだったのかよくわからないんです。本当にそうなんです。男性からすると「悪気はなかった」つもりでも、妻にとっては「なんでそんな言い方なの!?」となることがよくあります。大事なのは“言葉の選び方”。ほんの少し変えるだけで、妻の反応がまったく違ってきます。
ここからはシーン別に、NG例とOK例を紹介していきましょう。
【シーン1】妻「なんか頭痛い……風邪引いたかも」NG:「病院行ってきたら?」「俺も熱っぽい」「飯は?」OK:「大丈夫? 食べられそう? 何か作ろうか(買ってこようか)?」妻が「しんどい」と言ったときに、夫側がやりがちなのが「解決策の提示」や「自分のメシの心配」。さらには「オレも体調悪い」という謎の”被せ”。これ、全部NGです。
—―共感より先に“解決策”を出しがち……! 夫としては、思いやってるつもりなのに。妻がほしいのは、「共感」と「いたわり」の言葉。つまり、「大丈夫?」「何かできることある?」という「寄り添う姿勢」です。具体的な手助けの申し出までできれば、むしろ信頼度が上がるチャンスなんですよ。
【シーン2】妻「子どもの誕生日、どうする?」「運動会どうする?」NG:「〜でいいんじゃない?」「わからない」「任せるよ」OK:「〇〇が欲しいって言ってたから、〇〇にする?」「今スケジュール調整中!」妻にとって、子どものイベントは単なる予定じゃない。“夫がどれだけ家庭に関わる気があるのか”を測る試金石でもあるんです。たとえ仕事が忙しくても、「気にかけてるよ」という言葉があるだけで、妻の中での“父親ポイント”は上がります。
—―「自分が主導しなきゃ」とまではいかなくても、せめて“考える姿勢”を見せることが大事ですね。そうです。妻の本音は「一緒に真剣に考えてほしい」「子どもに寂しい思いをさせたら許さない」なんです。言葉にして示せば、ちゃんと伝わります。
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【シーン3】妻「やることありすぎて、時間が足りない」NG:「それ、今やる必要ある?」「後でやれば?」「言ってくれたら手伝うよ」OK:「いったん、落ち着こう。僕が〇〇しておくから、他にもあったら言って」「一人で抱え込まないで、一緒にやろう」
妻はタスクを抱えすぎて、もはやパニック寸前の状態。「なんで察してくれないの?」「ちょっとは一緒にやってよ!」という叫びが隠れています。それなのに夫は、何をしていいか分からず動けない。
結果、「居ても空気」な“置物夫”になってしまう。ちょっと手伝おうとしたら「もっと他にやることあるでしょ?」と逆ギレされて、また置物に戻る……負のループです。
—―妻のテンパリに遭遇したら、どうすればいいんでしょう?ポイントは“指示待ち”じゃなく、先手を打つこと。妻の負担を少しでも軽くする一言を添えると、状況はガラッと変わるはずです。
【シーン4】妻「夕飯どうする?」NG:「なんでもいいよ」「あるものでいいよ」「簡単なものでいいよ」OK:「今日は俺がなんか作ろうか? それとも外に食べに行く?」「(妻の名前)の料理は何でも美味しいけど、今日はサッパリ系の気分」毎日家族の健康を考えて献立を決めるのは、本当に大変。この質問は、「自分で考えるのにもう疲れてる」「せめてちょっとはヒントちょうだい」というサインなんです。肉系か魚系くらいは言ってほしいし、「なんでもいい」なら「じゃあコンビニでいいのね?」とモヤモヤする人も多い、根深い問題です。
—―なるほど。「あるもので」って、地味に地雷ワード……。まさに、地雷です。妻は“ある”状態を作るために動いてますから。妻の負担にならない範囲で具体的にリクエストしたり、外食を提案したりする。それだけで、妻のストレスはぐっと減ります。
――どのシーンも、ほんの少しの言い換えが、空気を変えるんですね。本当にそうなんです。ちょっとした言葉でも、家庭用モードに言い換える習慣を身につければ、妻の気持ちは“分かってくれてる”へ変化していきます。
ポジティブ日記・ゲーム感覚で。「家庭用言語化スキル」は誰でも伸ばせる

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—―こういった家庭用言語が使えるかは、センスの差も大きい気がしますが、練習すれば身につくものなんでしょうか?もちろんです。コミュニケーションスキルを鍛えることは、スポーツジムに通う感覚と似ています。急にベラベラと話せるようになるわけではありませんから、日々の小さな積み重ねが大事です。
—―筋トレみたいなものなんですね。「具体的に何をすればいいのか」があると行動に移しやすいですよね。まずは「ポジティブ日記」を書くことから始めてみてほしいです。
—―それは家庭に関することを書くのでしょうか?日常のささいな出来事に「気持ち」を添えて書きます。
たとえば「今日は満員電車なのに座れた」「ラッキーだった」「なんだか気持ちが晴れた」でもいいんです。自分の感情や感覚を言葉にする練習になります。
これを続けていくと、「今日は何かいいことなかったかな?」と自然とポジティブな視点を持てるようになり、次第に「あれ、今日は妻が機嫌良さそうだな」と、身近なパートナーの良いところにも目が向いていきます。
—―自分の感情を言語化する癖が、妻との会話にもつながると。そうなんです。「昨日こう思ったな」が会話のきっかけにもなります。
質問力を鍛えるだけで、会話が続く

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—―自分から話すのが苦手な人はどうしたら?「質問力」です。じつは、会話を広げるのは、質問のほうが効果的。
内容は本当に些細なことでいいんです。「今日の髪型、ちょっと違うね?」とか、ニュースを見ながら「この事件、どう思う?」とか。「晩ご飯、味付け変えた?」なんていうのでも、十分会話の呼び水になります。
—―質問力って、家庭ではあまり意識できてなかったかもしれません。そうですよね。よくあるのが、一言反応しただけで終わってしまうケース。妻が「この料理、実家のとはちょっと違うんだよね」なんて話しても、「へぇ、そうなんだ」で終わってしまう(笑)。
妻としては、もう一言「実家のはどんな味だったの?」とか返してほしいわけですよ。1往復のやりとりが2往復になるだけでも、全然違うんです。
—―なるほど。なかなかそれを自然にやれる人は少なそうです。ゲーム感覚で「どうしたらこの人をもっと喋らせられるか?」と考えるのもオススメです。「今回は3往復会話できた」「これを聞いたらどんな反応が返ってくるだろう?」など、コミュニケーションにチャレンジ要素を持たせると、楽しんで続けられますよ。
“会話できない”の壁を破ったら。その先に待つものとは

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—―実際に実践された方からは、どんな変化の声がありますか?「妻の機嫌がよくなった」「話しやすくなった」という声が多いです。最初は無愛想だったやり取りが、「それ何?」「どこで買ったの?」みたいに、ふとしたことがきっかけで会話が増えていく。その中で、お互いの思いや考えが伝わりやすくなって、誤解やストレスも減っていくんです。
—―妻の機嫌が良いだけで、日常の安心感も変わってきそうですね。そうなんです。以前は「ちょっと醤油取って」すら怖くて言えなかった、なんて方もいました(笑)。でも今は自然に言えるし、「はい」って返ってくる。「自分で取れば?」って返されていたような場面ですら、穏やかに済むようになるんです。
—―それって、夫婦だけじゃなくて、家族全体にも影響がありそうですね。はい。お子さんがいる家庭では「お父さんの雰囲気が変わった」「なんか安心感がある」といった、子どもからの信頼や尊敬につながった、という話もよく聞きます。
子どもは、親の変化を敏感に感じ取っています。だからこそ言葉でつながることは、夫婦だけでなく、家族みんなの安心にもつながるんです。
“分かってくれてるはず”を捨てて、もう一度ちゃんと向き合おう
—―最後に、変わりたいけど自信がない人に一言お願いします!大丈夫です! まずは小さいことから始めてみてください。1行の日記でも、ひとつの質問でもいい。「今日から会話を変えるぞ!」と意気込まなくていいんです。
失敗してもいいし、むしろ失敗して当たり前です。うまくいかなくても、「ああ、妻はこういう言葉が欲しかったのかな」とか「もう少し優しく言えばよかったかも」と気づくことがあれば、それで十分前進です。
会話はトライ&エラー。会話を通して「え、そんなこと考えてたの?」「妻ってこんな一面があったんだ」と新たな発見があると、きっと楽しくなっていきます。夫婦の間に、まだ知らない一面があると気づけたら、本当にラッキーなこと。それはもうギフトですからね。
◇
家庭の空気は「言葉」で変えられる。「わかってるつもり」を脱ぎ捨てて、今日からひとつ、声をかけてみよう。それこそが、夫婦の未来を変えていく第一歩になるのかもしれない。