終戦翌年に誕生した豚まんの知られざるヒストリー
戦後すぐに創業した蓬莱食堂。店名には「桃源郷(楽園)」を意味する「蓬莱」が用いられた
前身となるのは、創業者の故・羅 邦強(ら ほうきょう)氏が2人の仲間とともに創業した「蓬莱食堂」。大阪大空襲で一帯が焼け野原となった中、現在の本店の隣にあたる大阪市の中心部で、終戦からわずか2カ月後の1945年(昭和20年)10月に創業しました。

終戦直後で食べ物も不足する中、蓬莱食堂の名物・カレーライスが大ヒット。そのヒットが落ち着いた頃、創業者は次のヒットメニューとして創業の翌年である1946年(昭和21年)に豚まんを考案します。
台湾で食べていた豚饅頭と神戸・南京町で人気のあったものをヒントに、「もっと大きいサイズにして、1個で食べ応えのあるものにしたら大阪人の好みに合うのでは」と考えたそう。ネーミングも関西では「肉=牛肉」を指すため、分かりやすいよう「肉まん」ではなく「豚まん」と命名しました。
そうして誕生した豚まんは大ヒットし、今や関西を代表する味に。日本人好みの味付けや材料の分量、作り方は約80年経った今も、創業時から変わらないそうです。
蓬莱食堂で食事をする親子。子どもは豚まんを頬張っている
豚まんは元々食堂でしか味わえないイートインメニューでしたが、人気とともに需要が高まり、1952年(昭和27年)には店頭販売を開始。出来立てを食べてもらいたいという思いから、上記写真のように製造風景を見せながら販売する「実演販売のコーナー」ができました。
手包みしたり、次々蒸し上がったりする様子は、近くの戎橋(えびすばし)を行き来する人々の目に留まり、より購買意欲をそそるように。同時に、豚まんを食堂ではなく持ち帰って家で味わうという、今では当たり前ですが当時は画期的だった「テイクアウト」スタイルが徐々に浸透し定着していきました。
創業者の故・羅 邦強氏。蓬莱食堂を2人の仲間とともに開業し、後に独立して「551HORAI」を立ち上げた
店名が「551HORAI」になったのは、1974年(昭和49年)頃のこと。「もっと親しみやすい店名でお客さまに覚えてもらいたい」と思っていた創業者が、外国産のタバコ「555」からヒントを得て、店名に万国共通の数字を用いることを発案しました。店の電話番号が64-551番であったことや、「味もサービスもここがいちばん(=551)を目指そう!」という意味も込められ、「551HORAI」という名前が誕生しました。
赤と白のブランドカラーやパッケージデザインは、目立つようにという思いから。白地に真っ赤な文字で「551HORAI」と書かれた紙袋は雑踏でも一目瞭然。関西人にとっては愛着深いものになっています。
豚まんに詰まったおいしさへのこだわり
客から見える場所で、次々と豚まんが出来あがっていく、本店の厨房の様子
551HORAIが誇る豚まんのおいしさの最大の秘訣は、保存料を使わず、その日に製造した「蒸したて」を販売していること。全61店舗のうち58店舗で、1952年から始まった実演販売を今も続けており、各店舗で具を生地で包んでいる様子や、店によっては蒸している様子も見ることができます(チルド商品専門店、パンチャン店は除く)。
中でも2021年にリニューアルした、難波の戎橋筋(えびすばしすじ)商店街にある本店1階では、横に広がる大きなガラス張りの厨房を間近に見ることができ、よりライブ感あふれる製造風景を楽しむことができます。
セントラルキッチンから届いた生地を手でこねた後、重さを測って小分けにし、二次発酵を行う
店舗へはセントラルキッチンから一日に4~5回、生地と具が運ばれてきます。運搬中に生地を一次発酵させるため、販売店はセントラルキッチンから車で150分圏内の関西に限定。その日の気温や湿度によって発酵の進み方が変わるため、生地の状態を手の感触で確認しながら手作業で成形し、店内で二次発酵させます。二度の程良い発酵が、生地の甘みやモチモチ食感につながっています。

メインの具材は、豚肉と淡路島産を中心にした国産のタマネギ。食感を出すため、どちらも大きめのダイス状にカットされています。味付けは塩や醤油、香辛料など、素材の味を生かすシンプルなものです。

発酵した生地の中央に具をたっぷりのせ、一つずつ手包みしていきます。この手包みも大きなポイント。生地がしっかり発酵して弾力があるため、そもそも機械で包むのは難しいという問題もありますが、豚まんのふんわりした食感や味を最大限に生かすには人の手で包むのがベストなのだそうです。
ひだの数は蒸し上がった時にきれいに見える12~13本と決まっており、1分間に4個包めると一人前。達人の域に達すると、1分間に8個のペースで包めるのだそうです。
「ザブトン」とよばれる、豚まんの下に敷かれた薄い松もよい香りを添えている
約20分かけてふっくらと蒸したら完成です。湯気がもうもうと立ち込める中、スタッフがオーダーに応じて蒸し上がった豚まんを箱に次々詰めていきます。

また、こだわりは豚まんに添えられるカラシにも。酢や塩などを加えているため、辛味に加えて豊かな風味が感じられ、甘みのある生地と相性抜群です。セントラルキッチンで毎日製造しているオリジナルで、豚まんと同様、一日複数便のトラックで運ばれてきます。保存料は入っておらず、消費期限は豚まんと同じです。
ちなみにファンの間では、カラシにプラスして醤油やウスターソース、酢、酢醤油、ポン酢をつけるなど様々な食べ方が楽しまれているそうです。ぜひ次回の参考にしてみてはいかがでしょうか。
3/4