
「AS78」8万8000円/ロイドフットウエア(ロイドフットウエア 銀座 03-3561-8047)
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すべての写真を見るネイルダウン製法をご存じだろうか。読んで字のごとく真鍮ワイヤーを使った底付け技法で、釣り込んだアッパーとインソール、アウトソールをワイヤーでつなぎとめる。グッドイヤーでいうところのすくい縫いと出し縫いの役割をワイヤーが果たしているというわけだ。
それだけ聞けばずいぶんと荒々しい製法に思えるかも知れず、実際荒々しい一面もあるのだが、前後の工程は多岐にわたり、熟練の職人仕事が求められる。
一例をあげれば――下ごしらえには複数枚のレザーを縫合し、プレス機にかけて成型する工程が、ワイヤーを打ち込んだあとは余ったワイヤーを切断し、インソールをなめらかに整える工程が待っている。
底付け機の名は、ラピッド・ブラス・スクリューイング・ワイヤー・マシン。20世紀に一世を風靡したBUMS(ブリティッシュ・ユナイテッド・シュー・マシナリー)社謹製で、いまや世界に4台しか残っていないといわれる、誕生からゆうに100年を超える正真正銘の骨董品だ。職人の1日はその機械の清掃、修理、調整から始まる。
ネイルダウンはグッドイヤーウェルトよりも耐久性があり、防水性にも秀でるという。


確かな情報は得られなかったが、おそらくグッドイヤーウェルトと時を前後して考案された製法と思われる。現在はセイフティブーツに名残をとどめるに過ぎないが、かつては炭鉱夫ブーツや軍靴の製法として確固たる地位を築いた。その製法は終始一貫、危険と隣り合わせにある男の足元を支えてきた。
見どころは底付けのみにとどまらない。目利き垂涎のピューリタン社製ミシンで縫われた力強いステッチワーク、大胆に利かせたトウスプリング、そしてスチールキャップなどの先芯――どこをとっても頑強無比の一言だ。
製造を担うのは英国中部の工業都市、シェフィールドで創業したブーツメーカー。そのメーカーが呱呱の声をあげたのは1800年代のことだ。
これをラインナップに加えたのがロイドフットウエアというのが面白い。ロイドフットウエアはそのコレクションに「ザ・ブラス・スクリューイング・ワイヤー」の名を与えた。
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