「カレー人類学」とは……「ご当地カレーの唯一にして最大の成功者こそ、札幌で誕生した“スープカレー”です」。
全国4000軒ものカレー店を味わい尽くした男、カレー細胞さんはそう断言する。90年代の第一次ブーム以来、幾度かの盛り上がりを見せながら、すっかり札幌の味として定着したスープカレー。現在では中国でも人気が爆発し、わざわざ海を越えて北海道へ食べにくる観光客も続出しているという。
全国で専門店が増えつつある今、カレー細胞さんが思わず唸った名店3軒をピックアップ。
「どうせ水で薄めたカレーでしょ」なんて大間違い! 北の大地で成熟した、スパイシーかつ奥深いスープカレーの世界をご堪能あれ。
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カレー細胞●カレーキュレーター。日本全国はもちろん、アジア・アフリカ・南米に至るまで、4000軒以上のカレー店を渡り歩いてきた。カレーカルチャーの振興に向けた活動を精力的に行っている。雑誌やWeb連載のほか、「マツコの知らない世界」(TBS)などTV出演多数。映像クリエイターとしての顔も持つ。
地方発のカレーカルチャー、その代表格が「札幌スープカレー」です。
家族連れで食べに行ったり、旅行客が全国から、何なら海外からも専門店を目指して訪れたり。
もはや札幌の現地では、カレーと言えばスープカレーを指すのが常識です。既存のドロッとしたカレーは「ルーカレー」と呼び分けられ、今やすっかり亜種扱い。
ここまでの認知度を獲得したご当地カレーは前代未聞でしょう。
現在その背中を追いかけているのが、
「ネオ・カツカレー」の回でご紹介した、大阪発の「スパイスカレー・ムーブメント」です。マニアの間では盛り上がっていますが、一般大衆層に根付くほどには至っていません。大衆に愛されるスープカレーがいかに偉大か、今こそ再評価されるべきときなのです。
そもそもなぜ、スープカレーは札幌で生まれたのでしょうか。
「スープカレー」と銘打ったのは1993年にオープンした「マジックスパイス」ですが、実はそのずっと前から、札幌ではスープ状のカレーが提供されていました。
スパイス料理と言えば熱帯地方発祥がほとんどですから、これは異例中の異例です。
私が分析するに、この不可思議な現象を解くカギは「ラーメンカルチャー」にあります。
言わずと知れたラーメン王国・札幌には、スープで体を温める習慣があり、辛味噌などで辛さを足す文化も浸透していました。
ピリッと辛いスープをベースに、北海道ならではの立派な野菜をゴロッとふんだんに加え、海老出汁やラム肉などの名産物も詰め込んでいった。冷えた体をいたわるスパイスと、北の大地の豊かな恵みを、一皿で受け止めてくれる。
そう考えると、札幌でスープカレーが誕生したのは“偶然”ではなく“必然”であることが分かります。
仕掛け人なしに、生まれるべくして生まれたスープカレー。その歴史や文化背景まで味わえる珠玉の3軒へ、いざ、ご案内します!
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