40歳の節目に、キャリアブレイクを決断
加藤さんは、IT系企業でデジタルマーケティングや広報のコンサルタントとして約10年働いたのち、 文部科学省の広報戦略アドバイザーと東京都港区の広報専門職を兼業。その後、東京都庁の公募におよそ2000人の応募者の中から選ばれ、戦略広報担当課長に就任した。
興味がある領域で、着実にステップアップしてきた。けれど、2人の子どもの産休育休を経たキャリアブレイク経験者だった妻から何度も繰り返し言われ続けてきた。「歩みを緩める期間を設けてもいいんじゃない?」と。
「僕も妻の意見はもっともだと思っていたんです。でも、20代は忙しかったから、『30代になったら』と先延ばし。そして、30代に入ったらより忙しくなったうえに、子どもが生まれて、さらに余裕がなくなってしまって……。『どこかで、えいや!と決断しなきゃいけないな』と思う中、40歳はいい節目だなと」
2023年、40歳の誕生日を機に、任期よりも早く東京都庁を退職。家計面も考慮し、キャリアブレイクの期間は「最長2年」と決めた。妻はフルタイムで働き続けるため、加藤さんの収入がある程度下がっても家計に問題はない、という算段もあった。
(撮影:山中散歩)
加藤さんは、妻と7歳の長男、4歳の次男との4人暮らし。キャリアブレイク中の現在は、PR企業の顧問の仕事や研修・講演など、いくつかスポットの業務はこなしつつ、週の半分ほどはスケジュールを空けているのだという。
加藤さんはキャリアブレイクを「これまで向き合えてこなかった大事なことに取り組む期間」だと位置づけ、空いた時間をそのためにあてている。向き合えてこなかった大事なこととは、主に3つ。「家庭の財務管理」「健康管理」、そして「家族との時間」だ。
「財務管理」は、銀行口座の整理やクレジットカードの見直し、将来の資金計画など。どれも、忙しさのあまり先延ばしにしてきたことだ。これを機に、収支の状況を夫婦で見直す機会も定期的に作ることにした。
「健康管理」は、定期健康診断の受診、食生活の改善、睡眠時間の見直し、運動習慣の確立など。これまで加藤さんは「自分は健康だ」と信じていたが、健康診断を受けると要検査の項目が見つかり、あらためて健康管理の大切さを認識したという。加藤さん自身だけでなく、妻や子ども、親も含め、健康診断の受診や病気の予防に取り組んでいる。
そして、「家族との時間」。例えば、小学校1年生の長男の夏休み中は、将棋にハマった長男に付き添って、東京・千駄ヶ谷にある将棋会館に連日一緒に通った。往復2時間以上、電車に揺られながら子どもと話す。それは、忙しく働いていた頃にはとれなかった家族との時間だった。
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