デニムといったらリーバイス、と誰もが口を揃えるはず。だが、デニムを愛しながらも、それほどリーバイスに傾倒しなかった男もいる。
ビオトープのバイヤー・溝渕航平さんの場合、ファッション原体験はストリート。リーバイスの存在を知ってはいたものの前のめりに足を通してきたわけではない。そんな彼が今、リーバイスをはき始めているという。そのきっかけとなった1本とは……?
【写真18点】「『リーバイス信者ではない』と自認するバイヤーも夢中になったデニム」の詳細を写真でチェック 話を聞いたのはこの人 溝渕航平(みぞぶち・こうへい)●アダム エ ロペ、ワイルド ライフ テーラーのバイヤーとして長らく活躍。その類まれな審美眼と先見性は業界内でも随一で、現在はビオトープ、ボンジュール レコードのバイヤーとして腕を振るう。
リーバイス沼にハマらなかった男のデニム遍歴
「デニムの入り口はリーバイスだった」と語る溝渕さんだが、当時は周囲と同じ熱量を持っていたわけではない。
「本格的にファッションとして服を買い始めたのは高校生ぐらい。ステューシーやエクストララージなど、裏原に傾倒していきました。当時付き合っていた彼女と古着店へ行ってみようか、とボイスやサンタモニカにも通っていましたね」。
もちろんデニムもはいてはいたものの、ヴィンテージにはそれほど惹かれなかったという。
「憧れがないといえば嘘になるかもしれませんが、僕はコレクターではありません。所有したいというより“着たい人”。着られる古着を相応の値段で買うことが第一にありました」。
そんな溝渕さんの“ファースト・リーバイス”は御多分に洩れず「501」。それも狙って手にしたわけではなく偶発的な要素が強かった。
「高校生のとき古着店で色落ちのきれいなデニムを何となく選んだら、それがリーバイスの501でした。リーバイスに別段強いこだわりがあるわけではなく、『このモデルが好き!』という気持ちもありません。逆説的に考えれば、そんな自分でも手に取らせるリーバイスの引力はやっぱりすごいのですが(笑)」。
その後、「505」「517」「606」と脚を通してきたが、リーバイス一辺倒になることはなかった。ある種フラットな目線でデニムを捉えてきたと言える。
「ストリートブランドのデニムも買っていました。いいなと思うモノを手にしていた感じ。
その感覚は今の仕事にも影響していますね。ハイブランドだろうと、新参ブランドだろうと関係なく展示会に足を運びますし、フラットというかミーハーというか、マニアックにならないようには気を付けています」。
ファッションに対してのフィルターやバイアスを極力、排除してきた溝渕さん。リーバイス以外の愛用品を拝見すると、その一端が見える。
「正確にはデニムではないのですが、トルクのパンツもよくはいてみます。2、3年前にたまたまブランドのデザイナーさんと知り合い、ワイルドライフテーラーでも扱わせていただきました。ウレタンを織り交ぜた素材に転写プリントがされていて、バックポケットのアーキュエイトステッチの糸切れまで表現しているのがシンプルに面白いなと。
某人気古着店の方が監修に入り、希少なヴィンテージの501をベースにしていたと思います」。
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