山本彩、EP『U TA CARTE』で新境地を切り開く
12月25日、山本彩の新作EP『U TA CARTE』(ウタカルト)がリリースされる。このタイトルには、彼女がこれまで培ってきた幅広い音楽性や、多彩なルーツへの敬意が込められている。「U TA CARTE」は、フランス語の「アラカルト」をもじった造語で、“自由に選べる一品料理”という意味だ。
「料理を一皿一皿作るように、どの楽曲も丁寧に仕上げました。タイトル通り、“選ぶ楽しさ”を感じてもらえたらうれしいです」。
「音楽は一人で作るものじゃない――そんな気づきを得たEP『U TA CARTE』」。
「これまでの私は、コード進行を決めてから一人で歌詞やメロディを作るのが基本でした。でも今回は、バンドメンバーと楽器を鳴らしながらその場で曲を形にしていく新しい形に挑戦しました」。
そう語る新作EPの制作は、従来の「一人で考え抜いて完成させる」プロセスを一新するものであり、挑戦したのは「セッションスタイル」。バンドメンバーとリアルタイムで音を出し合いながら作り上げるこの手法により、新たな音楽的地平が切り開かれた。
「楽器を鳴らしているうちに、楽曲がどんどん形になっていくんです。音楽が生まれる瞬間のエネルギーをそのまま楽曲に込められる。それがすごく面白くて、刺激的な経験でした」。
特に歌詞制作のプロセスでは、これまでとは全く異なるスタイルを試みた。従来、歌詞が完成に近づくまでは他者と共有しなかった山本だったが、「チームSY(山本彩バンド)」の助言によって、そのスタイルに変化が生まれた。
「『もっと早い段階で歌詞を見せてくれた方が、お互いに気づけることが増える』と言われて、試しにやってみたんです。そしたら、思った以上に楽でした」。
例えば、『KIRAKUモンスター』という楽曲では、レコーディング中にも意見を出し合いながら歌詞を調整。その過程でこれまでにはなかった新たな体験を得られたという。
「今回の制作ではチームで作る楽しさを実感しました。それが楽曲にどんな風に影響したのか、ぜひ聴いてほしいですね」。
「木天蓼」と「カフェモカ」――対照的な2曲が描く音楽の幅
こうして生まれたリード曲「木天蓼(またたび)」は、山本の新たな挑戦を象徴する楽曲だ。アップテンポなイントロとマイナー調のボーカルラインが生む意外性、ジャキジャキしたギターの絶妙なバランスが、ロックと歌謡曲を見事に融合させている。
「『木天蓼』は攻めたサウンドと歌詞で挑戦を込めた曲。一方、『カフェモカ』は、休日の朝にぴったりの、肩の力を抜いてリラックスできる一曲です。ストレートな歌声に、適度なファルセットが加わり、情感をより引き立てています」。
力強い『木天蓼』と柔らかな『カフェモカ』。対照的な2曲が、EP『U TA CARTE』での山本の音楽的な幅の広さを象徴している。
音楽という一皿を自由に選び、味わう――そんな楽しみが詰まった作品が、このクリスマスに届けられる。
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