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▶︎すべての写真を見る 世は空前のグミブーム。ガムの市場規模をグミが抜き去り、2023年には販売金額ベースで972億円に到達し、今や1000億円に迫る勢いだ。
多種多様なフレーバーや食感、カタチの新商品が発売され続け、スーパーやコンビニでは特設コーナーが設けられるほど。もちろん読者にも「お口のお供」にグミを携帯している方も少なくないはずだ。
そこで、グミを噛むことで得られる効用と弊害を、大のグミ好きを自認する歯科医師の東直哉先生に聞いてみた。
噛むことで仕事のパフォーマンスアップに!
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――グミ=噛む、というイメージがありますが、歯科医師の立場から見て、グミを噛むことのメリットを教えてください。 「セロトニン」という神経伝達物質があります。このセロトニンは“幸せホルモン”とも呼ばれていて、幸福感が増したり、ストレスを緩和させたりするなど、精神の安定に深くかかわるものです。
セロトニンは日光を浴びることで分泌が促されますが、意識的に分泌量を高める方法があります。それが一定のリズムを刻む「咀嚼」です。
ですから、グミを噛むことはストレス解消に効果的といえるでしょう。またセロトニンには精神の安定だけでなく、集中力・注意力が高まる効果もありますので、仕事や勉強の合間に食べるお菓子としては最適です。
そして、中高年の男性に多い悩みが「口臭」です。口臭対策は色々ありますが、お手軽なのが、唾液。唾液には殺菌・抗菌効果があるので、唾液の分泌量が増える咀嚼を伴うグミは、お口のエチケットとしても有能といえます。
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ーー噛むことにメリットがあるなら、グミよりガムのほうがいいのでしょうか? 咀嚼することのメリットだけにフォーカスを当てたら、咀嚼回数の多いガムのほうが良いでしょう。ですが、噛みすぎるのも問題です。一日で上の歯と下の歯が接触している時間はどれぐらいだと思いますか?
答えは17分程度です。
しかし、ガムなどによって咀嚼回数が異常に多くなると、接触時間は増え、当然歯の負担になります。私の患者さんで、デスクワーク中はずっとガムを噛んでいるという方がいました。
ある日歯が痛いと来院されて診察したところ、「咬合性外傷」という歯周組織の損傷がみられました。咬合性外傷は食いしばりや歯ぎしりといった癖がある方に多くみられる障害なのですが、ガムを一日中噛むことで負荷がかかったようです。
その意味では、だらだら噛むことのないグミのほうが歯には優しいといえるかもしれません。まあ、微々たる差ではありますが。
――強く噛むことが歯や歯茎の負担になるとしたら、昨今流行りのハード系のグミはよくないのでしょうか? 一長一短です。ソフトタイプのものより満足感が得られやすいので、結果的に総量を抑えられますし、出先で小腹がすいたときにも重宝するでしょう。ですが、あまりに硬いものだと、先ほどの患者さんのように歯に痛みが出てしまうこともあります。
歯科医師の立場としては「ハードすぎるグミは避けましょう」と言うしかないですが、いちグミ好きにとっては、ハードグミの弾力感は癖になるので、やめられません(笑)。ですから、右の奥歯ばかりで噛む癖がある方は左の奥歯も使うなど負荷を分散するといいでしょう。
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