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――発達障害はもともと子供の障害と言われていたが、成人してから診断されることもある、ということですね。

太田
 そうですね。先ほど、幼い頃からある脳の機能障害であるということを述べました。つまり、発達障害は子供の頃からすでに特性が存在しているということです。

それが大人になるまで診断を受けてこなかった。子供の頃から「変わっているね」と言われていたけれども診断はされておらず、大人になって医療機関を受診して初めて診断が降りたというケースは多いです。

――見落とされる理由や診断基準にはどんなことがありますか?

太田 ASDの方はコミュニケーションが不得手であっても、学業に問題がない場合、見過ごされることがあります。また、例えば、ADHDの忘れ物や落とし物が多いという特性は、単なる“不注意”として、診断を受けていないことがあります。

子供の頃は、「お母さん、子供をしっかり見てください」という教育の問題になったり、「もっと頑張りなさい」といった本人の努力の問題になったりする。でも大人になると、「自分では一生懸命に頑張っているのに、どうしても不注意が起きてしまう」ということがあります。

特性によって異なりますが、診断基準としては、社会生活や日常生活に困るほどの特性が出ているかということになります。



――なるほど。例えば、私は算数LD持ちなのですが、数字が苦手で確定申告ができません。それが仕事に支障をきたすために診断が降りたというわけですね。もし、自分は発達障害かな? と思ったときに本人がすべきことはどんなことですか?

太田 ケースバイケースなのですが、確認するためには、まず発達障害を診ているクリニックや病院への受診です。特にコミュニケーションの苦手さや不注意症状で、仕事や日常生活で失敗をして怒られたり傷ついたりしてしまった場合、自信を失ってうつ病や不安障害などの二次障害が出てくることがあります。

生活の中で困りごとを抱えて自信を失っている発達障害の方は非常に多いです。うつ病になってしまって受診をしたら、実はその背景に発達障害があったと判明するケースも多くあります。

ほかにも仕事がうまくいかなくて受診したら発達障害が原因だったと、あとでわかることも結構ありますね。

――発達障害を疑って受診する年齢層は何歳くらいが多いのですか?

太田 20〜30代の方がいちばん多いですね。大学進学や社会に出てうまくいかず、受診するという方が大半です。逆に40〜50代になってやっとわかったという人もいます。その多くは、管理職になったタイミングです。

例えばASDの方であれば、現場で技術職としてうまくやっていたのに、管理職になって部下ができ、そのマネージメント業務が極端にできず、うつ病になってしまうというケースがあります。


発達障害の特性の出方は十人十色で、特性の出方もグラデーション状だ。ASDだからこの人はこう、ADHDだからこの人はこうだ、という断定はできない。

もし、この記事を読んでいる方で日常生活や社会生活に支障をきたすほど“生きづらさ”を抱えている方は、発達障害を診ているクリニックに受診してみることをおすすめしたい。

受診して診断を受けると、なぜ自分が「今までうまくいかなかったことが多かったのか」が判明し、不注意症状や衝動性を抑えるための工夫ができるようになったり、コミュニケーションの取り方のコツを考えられるようになる場合もある。

また、診断を受けて障害者手帳を取ることで障害者雇用で合理的配慮を受けつつ働くという選択肢もある。

後編では、発達障害の夫婦関係について言及していく。

姫野 桂=取材・文 佐藤ゆたか=写真

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