「カレー人類学」とは…… 「カツカレー」は今や世界が熱狂する超注目フード。その話は、
前回お伝えした通りだ。
現在日本ではスパイスカレーがトレンドだが、実はこのスパイスブームを経由して、カツカレーはさらなる進化を遂げているという。
名付けて“ネオ・カツカレー”。
4000軒ものカレー店を食べ歩いたカレー細胞さんが、カツカレー界を牽引する綺羅星たちを紹介してくれた。
▶︎すべての写真を見る 案内人はこの方! カレー細胞●カレーキュレーター。日本全国はもちろん、アジア・アフリカ・南米に至るまで、4000軒以上のカレー店を渡り歩いてきた。カレーカルチャーの振興に向けた活動を精力的に行っている。雑誌やWeb連載のほか、「マツコの知らない世界」(TBS)などTV出演多数。映像クリエイターとしての顔も持つ。
「世界でカツカレーがブームと言われているけど、日本のトレンドはスパイスカレーでしょ?」と思われる読者も多いのではないでしょうか。
写真映えするビジュアルと、さまざまなスパイステクニックが取り入れられた、誰も見たことのない新しいカレー。2000年頃に大阪で始まったスパイスカレー・ムーブメントは、現在もSNSを中心に盛り上がっています。
とても面白い可能性を示したスパイスカレーですが、一方で“日本カレー界のど真ん中”とはまだ言えません。
「スパイスが粒丸ごと入っているのは刺激が強すぎる」「やっぱり昔ながらのカレーが好き」という声も多く、メジャー選手というよりは、一部に熱狂的なファンを持つ存在なんです。
もうひとつ言うと、海外から来日した人のほとんどはスパイスカレーに食指が動きません。彼らが目指すのは昭和な“カレーライス”の店。
「南インド風にしろスリランカ風にしろ、スパイスカレーはその国に行って食べればいい。せっかく日本に来たんだから、日本のカレーを食べたい」というわけです。
専門店は飽和しつつあるのに、いまいちマイナーな立ち位置……。そんなスパイスカレーをめぐって、2020年頃、シェフたちは“原点回帰”へ舵を切りました。
複数のカレーを掛け合わせる“あいがけ”をやめて、「これがうちの看板です」と誇れる、たったひとつの味に絞る店が続出したのです。
その流れでシェフたちがたどり着いたのが、そう、カツカレーです。
スパイスカレーがもっとも否定したかった「既存カレーの象徴」ですから、いわば真逆のベクトルです。
でも「スパイスカレーは何でもありを合言葉に発展してきたのだから、超メジャーなカツカレーを禁じ手にするのはおかしい!」と揺り戻しが起きた。
しかも面白いことに、ただ回顧するのではなくて、螺旋階段をのぼるようにして高みへ進んでいるのです。
“決めたい味と香り”を目がけて、シェフがスパイスを巧みにコントロールしていく。そして、カツとカレーとご飯という三位一体のバランスを今一度問い直し、繊細に足し算・引き算する。
スパイスカレーというカルチャーを経て、シェフの引き出しが増えたからこそ「ネオ・カツカレー」が誕生したのです!
最新のカツカレーを世界に発信すれば、さらなる熱狂を生み、日本経済の救世主にすらなるかもしれない。超期待の店にいざ、まいりましょう。
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