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2024.11.10

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坂口健太郎「自分がWellbeingでいられるのは周りのおかげ」OCEANS AWARD受賞インタビュー

さかぐちけんたろう●2014年に俳優デビュー。映画『64-ロクヨン』(16年)で第40回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。韓国ドラマ初主演作となるCoupang Playオリジナルドラマ『愛のあとにくるもの』(日本ではPrime Videoで配信)が配信中。有村架純とW主演を務めるNetflixシリーズ「さよならのつづき」が11月14日より配信スタート。

さかぐちけんたろう●2014年に俳優デビュー。映画『64-ロクヨン』(16年)で第40回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。韓国ドラマ初主演作となるCoupang Playオリジナルドラマ『愛のあとにくるもの』(日本ではPrime Videoで配信)が配信中。有村架純とW主演を務めるNetflixシリーズ「さよならのつづき」が11月14日より配信スタート。


昨年に引き続き2回目の開催となったOCEANS Feel So Good AWARD。今年の「The BEST Wellbeings」の受賞者は6名。そして、セイコー プロスペックス特別賞を受賞したのは、俳優の坂口健太郎さんだ。

映画やドラマの中から受ける印象と、実際の印象がこれほど変わらない人というのも、なかなか珍しい。ひと言で言えば自然体。でもそれを実行するのは、年を重ねるほど難しくなってくる。

どうすれば坂口さんのように自然体で振る舞えるのか。そんなWellbeingな生き方のヒントを教えてほしいと思ったのだが、返ってきたのは意外な答えだった。

撮影現場の潤滑油を買って出る理由

「メカニカルダイバーズ 1965 ヘリテージ」。SSケース、40mm径、自動巻き。300m空気潜水用防水。17万6000円/セイコー プロスペックス(セイコーウオッチお客様相談室 0120-061-012)

時計は「メカニカルダイバーズ 1965 ヘリテージ」。SSケース、40mm径、自動巻き。300m空気潜水用防水。17万6000円/セイコー プロスペックス(セイコーウオッチお客様相談室 0120-061-012)


「以前、懇意にしているスタイリストさんに『健太郎は、空気を読む人の空気を読んでいる』と指摘されたことがあったんです。ああ確かに、と思いました。撮影現場全体に気を配って、必要とあればその場の道化にもなれる。大事なタイミングも、絶対に見逃さないですし」。
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空気を読むのは、どうやら俳優の仕事をしていくなかで培われたらしい。坂口さんは「近しい人の間で、諍いが起きている状態がいちばん苦手」だというのだ。

「自分に近しい人というのは、普通は家族です。ただ僕の場合、映画1本2カ月、ドラマ1本4カ月で撮るというときに、いちばん近くにいるのは俳優を含めたその作品のスタッフさんなんです。その空間で、何かしらの摩擦が起きるのがものすごくストレス。だから空気を読むこと、現場の潤滑油になることが得意になったんです」

そういった人ほど周囲に気を遣って、逆にストレスを溜め込んでしまうのが世の常。しかしながら坂口さんは、いわゆる“いい人”とは若干メンタリティが異なるようなのだ。



「そこまで自分を追い込まずにいられる理由は、自己肯定感の強さにあるんじゃないかと思っています。自分をちゃんと褒めることができて、自分をちゃんと叱ることができる。自分への愛が強いから、他人にも愛情を注げるんだと思います」。

撮影現場での潤滑油の話は、腑に落ちた。なぜならこのインタビューにおいても、坂口さんは抜群のコミュ力を発揮してくれたから。質問の意図を正確に把握して、わかりやすい言葉で答えを返してくれる。

「コミュニケーション上手というか……基本的におしゃべりなんですよ(笑)。人見知りもまったくしませんし。それに人間関係はもちろん、効率的に仕事を進めるための潤滑油でもありたいと思っています。

例えば、撮影では出番以外の進行を目にしておくことは、いろんな意味で効率化につながると思っています。カメラテストもスタッフさんではなく、本人が画面に入ったほうがイメージが湧くでしょう。そういう小さな効率化が、好きなんですよね。

撮影の段取りは、カメラマンも照明も把握しています。それを俳優が知って、マイナスなことは何ひとつないと思うんです」。

どこまでも自然体で他人を気遣うこと。それが坂口さんにとっての「空気読み」だ。その場の表層を取り繕う行為では、決してないのである。
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周囲にどう思われてもいい



「芝居に正解はない、なんてよく言いますが……年を重ねるごとに、そのとおりだと思うようになりました。台本を読み込むのは大事なこと。でも自分の中で頑なに役を決め込んでしまうと、相手との会話が成り立たなくなってしまうんです。相手というのは共演する俳優であり、視聴者や観客でもある。

だから映画やドラマの公開時の会見で『作品を見て何を感じてほしいですか?』という質問が苦手なんです。何を感じるかは、観客それぞれですね。オーソドックスな作りのラブストーリーでも、それを見た人がラブストーリーと受け取るかどうかはわからない。どんな作品も、世に出たらお客さんのものなんです」。

そんな坂口さんだが、若い頃は少しだけ、肩に力が入っていた。
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「昔は、自分で自分をしんどい方向に向けていたのかもしれません。坂口健太郎という名前が世間に広まるにつれて、『自分ではない誰かが売れている』感覚に陥って。本当の自分はこうなんだ、こう見てほしい。そんな気持ちを外に向けてしまうこともありました」。

例えて言うなら、背負ったリュックに自分で石を詰め込んで、身動きがとれなくなってしまっているような感覚。だが今は、掴んだ石をふっと手放すことができるようになったという。



「俳優としての何かを誇示したいという気持ちは、もうありません。今はすごく楽になりました。極端な言い方をすれば、周囲にはどう思われてもいいかなと(笑)」。

そんなふうに思えるようになったのは、ある舞台の仕事がきっかけだった。初演が実に1896年という、チェーホフの『かもめ』。世界各国で演じられてきた古の戯曲である。坂口さんは2016年に、この舞台に出演した。

「参考資料や映像を見て勉強したほうがいいか、演出家さんに聞いたんです。その答えは『どちらでもいい』という意外なものでした。

演出家さんいわく、参考資料を見たら“見た坂口さん”の演技になる。見なかったら“見なかった坂口さん”の演技になる。ただそれだけのことで、どちらでも構わないのだと。

古今東西の、何千何万という俳優が演じてきた役。ただどんな名優も唯一演じることができないのは“坂口さんの演技”なんだ、と。それを聞いたときに、俳優という仕事の扉が少し開いたような気がしたんです」。
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