170円時計の原案「ヤンキー」
今回発売される「ウォーターベリー」のモデルとなったのは、1890年代に発売された、とある時計である。
遡ること170年前、ポケットウォッチは高価なもので、上流階級など一部の層にしか普及しておらず、庶民には手の届くものではなかった。そこで1854年に「ウォーターベリークロックカンパニー」として創業した現在のタイメックスが、一般大衆が手にできる価格でポケットウォッチ「ヤンキー」を製造販売したのだ。
これこそが今回発売される時計の源流だ。
生産工場は真鍮加工産業で栄えたコネチカット州ウォーターベリーを拠点にしていた。土地柄、そこでは鋳型を用いて品質の一定したパーツ生産ができたというワケである。
そうして「ヤンキー」はそれまで高級品しか存在しなかったポケットウォッチを1ドルで発売。今考えても驚きのプライスだ。
結果、農家や工場などで働く労働者や鉄道の車掌など、大衆が時計を手にする時代が到来。20世紀を迎えるころには600万本以上の「ヤンキー」が一般のアメリカ人の手に渡っていった。
そのなかには『トム・ソーヤーの冒険』の著者であるマーク・トゥエインも含まれる。彼が「ヤンキー」を2本購入したいと書いた直筆のメモがタイメックス本社に残っているそう。
「ヤンキー」はやがてアメリカ国外にも普及し、かの有名な「タイタニック号」の乗客の遺品からも見つかっている。
こうして「ヤンキー」は「ドルを有名にした時計」と称された。
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