濃厚ラーメンから淡麗ラーメンへの変遷
ただ、ここでもう一点付け加えておきたい。21世紀に入った頃から、それまでは、動物系ベースの濃厚ラーメン一辺倒だった京都市のラーメンシーンにも、大きな変化が訪れた。
全国的なラーメンカルチャーの成熟と歩調を合わせるかのように、透明感のある清湯スープに繊細な中細ストレート麺を合わせた「淡麗ラーメン」を提供する店舗が続々と産声を上げ、今では、淡麗系を提供するラーメン店が、同市の上位人気店の過半を占めるにいたっている。
繰り返しになるが、京都市は優良店の宝庫だ。これまでにメディアに採り上げられたことのある有名実力店の数は、100軒を下らないだろう。既にメディアで紹介された有名店ばかりを紹介しても、仕方がない。そこで今回は、約1カ月前に私が京都市を訪れた際に食べ歩いた店舗の中から選りすぐった優良店をご紹介する。
交通の便が比較的良好なお店をピックアップしたので、京都観光との相性も良いのではないかと思う。気になったお店があればぜひ、立ち寄っていただければ幸いである。
名店① 淡麗ラーメンの名店を経てオープン「らぁ麺や ふぢとら」
最初に紹介するのは、2023年9月にオープンした「らぁ麺や ふぢとら」。
店舗の場所は、JR山陰本線・花園駅から約400m。京都市の玄関口であるJR京都駅から花園駅までは5駅で、花園駅から店舗までは5分も歩けば到達できるので、距離的なハードルはあまり高くないと言えるだろう。
店主は、京都を代表する淡麗ラーメンの実力店「らぁ麺とうひち」のご出身。店主の地元は大阪府だが、「とうひち」での修業時代に出逢った人たちへの恩返しの意味合いも込めて、京都の地での出店を決意した。
現在、同店が提供するレギュラー麺メニューは、「醤油らぁ麺」、「塩らぁ麺」と、そのバリエーション(味玉、ワンタン、チャーシュートッピング)。その他、「ふぢとら」では、期間限定メニューも精力的に提供しており、そちらの人気も上々だが、初訪問時に食べるべきは、「醤油らぁ麺」だろう。
注文してからラーメンが提供されるまでの待ち時間は3分程度。華麗なオペレーションにより創り上げられた1杯の「顔立ち」は、瞬時に「これは絶対に美味いに違いない」と確信できるほど、端正で隙がない。
スープをひと口すすると、その確信が「正解」であることが証明される。黒さつま鶏などの地鶏や黒豚から丁寧に出汁を採ったスープは、すする度にクリアなうま味が味覚中枢をノックする渾身の仕上がり。
合わせる太縮れ麺のモッチリとした口当たりも、食べ手に鮮烈な印象を刻み込む。
自家製麺とスープの相性も、すこぶる良好だ。ちなみに、私は「わんたん醤油らぁ麺」をいただいたが、ワンタンも餡がぎっしり詰まった肉厚仕様で、衣と麺とが奏でる「小麦と小麦のハーモニー」も、実に官能的な旋律を紡ぎ出していた。
2023年に開業したばかりの若い店であるが、ラーメンの味わいは、既に一流の域に到達している。今、京都市を訪れるのであれば、必ず、押さえておきたい店のひとつだろう。
らぁ麺や ふぢとら住所:京都市右京区太秦安井辻之内町15-7営業:11:00〜14:00/18:00〜20:00(夜は水〜土のみ)定休:火曜X:@fujitoramen 3/5