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「捨てるという概念を捨てる」リユースプラットフォーム



ーーテラサイクル社のミッションやLoopのサービス内容を詳しく教えてください。

エリック・カワバタ氏(以下エリック) テラサイクル社のミッションは廃棄物をなくすことです。まずは廃棄物のあり方そのものを考え直す必要あると考えます。

例えば、洗剤やペットボトルなどのプラ容器は処理の前に、選別や洗浄を行うことでリサイクルが可能になる廃棄物ですが、元々使い捨ての容器はリサイクル前提で作られているわけではありません。リサイクル原料にするためには向き不向きがあり、実際にリサイクルするときは、樹脂を溶かして原料を作り直すので、強度や質も変わります。それにより、どうしてもリサイクル過程でマテリアルロスが発生する課題があります。

ーー日本ではゴミの分別がずいぶん前から行われているので、廃棄されたプラ容器は当然リサイクルがされていると思っていました。

エリック 強度や質、マテリアルロスのことを踏まえると、すべてのプラ容器をリサイクルできるわけではありません。本来は、リサイクルする前提で商品を設計しなければならないんです。つまり、最初からゴミにならないように物を作ることが大切。そうしなければ循環経済は達成できません。

その点で言えば、使い捨ての容器とリユース容器がありますが、資源を循環させるためには、圧倒的にリユース容器が環境負担を減らすことにつながります。廃棄物ゼロを目指す中で、環境にメリットのあるリユース容器を使い捨てと同様の利便性を担保しながら作れないかと考え出したのが、Loopというシステムです。



ーー具体的にはLoopはどのようなシステムでしょうか?

エリック Loopとは、従来、使い捨てされていた日用消耗品や食品などの容器や商品パッケージを、ステンレスやガラスといった高い耐久性のものに変え、繰り返し利用を可能にするシステムです。現代は使い捨て容器が多すぎるので、それを減らすために再利用できる容器のプラットフォームが必要だと考えて生まれました。

例えば、ロッテのキシリトールガムは、通常のパッケージのほかに、Loopのステンレス容器の商品が存在します。こちらは、消費者がガムを食べた後に空き容器回収ボックスに戻すと、その容器がLoopで洗浄され、ロッテで製品が再充填されて店頭に並びます。

実際にイオンで設けられている、ループのコーナー

実際にイオンで設けられている、Loopのコーナー


日本でのLoop製品は、イオンで約20製品取り扱われています。ちなみに海外の状況はというと、アメリカでは実証実験の段階でまだビジネス展開は行なっていませんが、フランスではスーパーの「モノプリ」と「カルフール」で展開されています。EUでは数年後に、再利用できる容器を増やすよう法律が施行されるため、それを見据えてフランスは民間企業も準備を始めている状況です。その関係もあり、フランスでの事業成長が最も早いですね。

ーー消費者にとっては価格も気になるところだと思います。例えばLoopのキシリトールガムは、いくらで販売されていますか?

エリック 販売価格は1900円で、通常商品と比べると若干高いです。容器がステンレス製のため素材自体が高く製造コストがかかるのが理由です。しかし、空き容器を回収ボックスに入れると880円が返金されます。

Loop製品の販売価格はデポジットとして容器代が上乗せされた金額ですが、このように容器の回収が完了すると専用のアプリを通じて容器代が戻ってくる仕組みなのです。



ーー自宅にLoopの空き箱を回収にきてくれるようなサービスもありますか?

エリック 家庭向けには行っていませんが、「Loop プロフェッショナル」として、アスクルとBtoBの事業を展開しています。業務用のハンドソープやサニタイザーなどを10Lのタンクで販売しています。

ある会社がアスクルから備品と同じようにLoopの商品を購入すると、タンクが空になったらアスクルが引き取りに来る。それを洗浄して、メーカーが充填し、アスクルで販売するという流れです。

また、先日カクヤスともパートナーシップを発表し、今後もパートナーを増やす予定です。

ーー容器素材から考え直したことが、結果的にリユースに優れた容器を作り出し、プラごみも減らすことができたんですね。

エリック 樹脂製のキシリトールのボトルの場合は、廃棄プラスチックとなってしまいますが、ステンレス容器ならば、再利用できるのでゴミにはなりません。金属なので洗浄・充填しても、かなり長く使いまわすことができます。


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