にもかかわらず、大根監督の言葉を借りると「まともな奴(キャラクター)が1人もいない」のです。結果として、それが「面白い」と思わせるのはある意味、皮肉。大根監督が狙ったことでした。
「基本的には役者を撮るのが大好きなんですよ。どんなに悪い役でも僕が撮るとチャーミングになると思っています」と前置きしつつ、「今回は、誰一人として感情移入できるキャラクターがいない作りをあえてやりました。感情移入って共感とか応援という意味合いで使われていると思うのですが、そういう意味では『地面師たち』の場合、応援したい奴もいないし、共感もできない。ただ、物語に感情移入できるようにすれば、キャラクターが後からついてくるような気がして。だから、誰が見ても楽しいものになるんじゃないかなって」
実際に中毒性を持った面白さがあり、それが一気見視聴を促しています。続けて説明してくれた大根監督独自の見解も興味深いものがありました。このドラマには「ドッキリ的な要素もある」と言うのです。
「日本はバラエティー番組の中でドッキリというジャンルが長く定着しています。手口からやり方まで新しいものが次々と生まれて、たとえば『水曜日のダウンタウン』のようにドッキリの進化系まである。日本人って騙される人を見るのが好きな国民性なんじゃないかと思っています」
100億円規模の不動産をめぐるストーリーは、大根監督曰く、ある種の「ドッキリ」だという(写真:Netflix)
100億円規模の不動産をめぐり、変装も使って、死体もゴロゴロ出て、あらゆる手段で騙しにかかるストーリー部分は、エンターテインメント作品として成立させた「壮大なドッキリ」として確かに捉えることができます。
日本ならではの特殊性
日本人好みのドラマとも言えるなかで、そもそもドラマ「地面師たち」は映画やテレビドラマでは成立しにくかった企画でもありました。関連事業やスポンサー事情がネックになるからです。「Netflixっていう手があるか――」。そう思って、大根監督が持ち込んだ経緯からも皮肉さあふれます。
Netflixオリジナル作品として企画が成立した背景については、Netflixの高橋信一エグゼクティブプロデューサー(以下、EP)の答えが腑に落ちます。
詐欺の手口としての“なりすまし”に「日本ならではの特殊性」を感じた高橋EPは、話し合いを始めた時点から大根監督がそこに面白さを見出していることに気づき、信頼を寄せたそうです。
4/4