名店② 函館駅前エリアの実力店「鳳蘭」
続いてご紹介するのは、「鳳蘭」。同店も、「滋養軒」と同じく、函館を代表する実力店のひとつ。
個人的な見解になるが、ここで声を大にして伝えたい。せっかく函館にまで足を運んだのであれば、「滋養軒」と、ここ「鳳蘭」だけは、万難を排してでも足を運んでもらいたい、と。
冒頭で述べたとおり、同店の創業年は、戦後間もない1950年。創業70年を超える、堂々たる老舗だ。店舗の場所は、市電松風町停留場が最寄りとなるが、函館駅からでも十分徒歩圏。5分も歩けば、店前まで辿り着くことができるだろう。
同店が提供する麺メニューは、「塩ラーメン」「正油ラーメン」「味噌ラーメン」「五目メン」など。もちろん、おすすめは「塩ラーメン」。私が同店を訪れたときも、ほぼすべてのお客さんが「塩ラーメン」を注文していた。
注文してから商品が提供されるまでの待ち時間は、およそ5分。眼前に登場した「塩ラーメン」のビジュアルは、かすかな濁りを湛えた清湯スープの中をストレート麺が悠々と泳ぐ、老舗の貫録を感じる佇まい。
トッピングは、チャーシュー・メンマ・刻みネギのみ。構成はこの上なくシンプルでありながら、まったく物足りなさを感じさせない。丼から漂う絶大な安定感に、食べ手は躊躇することなく、箸を付けることができるだろう。
野菜を使用せず、豚骨と鶏ガラのみから出汁を採ったスープは、「豚」の豊潤なコクが絶妙なさじ加減で押し出され、舌上で、塩ダレの淡き滋味とピタリと一体化。その味わいは、うま味を味覚中枢が感知した瞬間、頬が落ちそうになるほど上質だ。
ストレート麺の茹で加減も過不足なく、堂に入ったもの。気付けば、スープまで一滴残らず完食してしまっていた。
5/6