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今も変わらない、1970年代のアメリカへの憧憬


ライフスタイルに合うように変更を加えたものの、すべてを新しくしたわけではなく、車自体のアイデンティティはしっかり残している。内部を見ると、そこかしこに’70年代の名残が見て取れる。

「メーターはスピード、回転数、温度計、ガソリンの残量と、ここにすべてが集約され、ひと目で把握できるように作られています」。



「このポケットは灰皿なのですが、小物入れとして使用していますね。日本へ持ってきたときからずっと入れっぱなしの2ドル紙幣が2枚。アメリカにいた頃、仕事で乗るとき通行料金を支払わないといけなかったんです。往復分で4ドル。当時はいつもここに入れていたので今もそのまま放置している感じです」。



この車に搭載されているエンジンは、フォード社きっての名作エンジンと謳われた302V8。

「言わずと知れたフォードの302V8は、コルベットやマスタングにも採用されていました。古いエンジンではありますが、今でも現役。世界中を探してもそう見つかるものでもないので、これは交換せず、ずっと残していくつもりです」。

加えて、特徴的なワイパーやフットペダルも購入時のままである。



「ワイパーが上部に付いているので、別段水滴をきれいに拭えるわけじゃないですが、愛着がありそのまま残しています。

またライトのハイビームの切り替えスイッチはなぜか足元にあり、足で踏んで切り替えるのですが、パッシングができないんですよ」。



レストアしていない部分は「何かにつけて不便ですね」と苦笑。それでもKENSHINさんがこの車に乗り続ける理由はある。



「いろいろと手は掛かりますが、おそらく手放してしまえば二度と見つからないでしょう。武骨でシンプルなデザインが個人的にはすごく気に入っているんですよ。

メーター周りを見ても分かりますが、ボタンはなく、大半が引っ張ったり押したりするレバー式。一見無駄な機能でも、当時の世相を反映した車作りのヒストリーが包まれていると思えば、愛着に変わります」。




家族からは「目立ちすぎるから絶対一緒に乗らない」と、やや不評気味なアーリーブロンコ。

とはいえ、取材中に車を目にした通りすがりの大人がKENSHINさんに熱心と話しかけている様子を見ていると、やはりこの車の引力は相当なものだと実感できる。

佐藤ゆたか=写真 菊地 亮=取材・文

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