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軽い操作感のシフトレバーを握って、しゅんっと上の回転域まで回るエンジンのフィーリングを味わうのが楽しかったし、カーブでは軽いノーズゆえ、気持ちよく曲がってくれた。

1994年には、コンパクトとも呼ばれた「ti」というシリーズも追加された。E36クーペのテールを短く切ってハッチバック化した、独特なボディデザインのモデルだった。

ハッチバックとしたtiモデルは、のちに1シリーズへと進化していく(写真:BMW)

ハッチバックとしたtiモデルは、のちに1シリーズへと進化していく(写真:BMW)


リアサスペンションが先代と同じ(当時は時代遅れとされた)セミトレーリングアーム形式だったのも独特。ノーズはE36クーペと同じというのが、かなり違和感のあるデザインである。

日本では「318ti コンパクト」が販売され、300万円を切る価格からBMWのエントリーモデルとしての役目を果たしたものだ。ステーションワゴンのツーリングが、日本には正規輸入されなかったのは、少々残念だった。

今「ネオクラシック」として


なにはともあれ、このE36・3シリーズにおいて、BMWはさまざまな試みをしていたといえる。

軽快なイメージが前面に押し出されていて、そこが競合するメルセデス・ベンツの重厚さと違っていたし、アウディの生真面目な技術至上主義とも差異があり、華やかな印象があった。

3シリーズはその後、フルモデルチェンジのたびに、どんどんボディサイズが拡大していった。大きな理由は、衝突安全基準。車体の変形部分を大きくして、万が一の際の乗員保護を図るためだ。

E36で全長4210mm×全幅1698mmだったボディサイズは、最新の3シリーズ(G20)では全長4715mm×全幅1825mmにもなっている。

安全性能だけでなく走行性能においても、当然はるか上をいくのだけれど、扱いやすさの点では、E36に分があるのも事実。

車体が大型化する昨今、そのあたりもある種のノスタルジーに寄与しているのかもしれない。ネオクラシックやヤングタイマーとして、再評価される日も近いだろうか。



小川フミオ=文
東洋経済オンライン=記事提供

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