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ウズベキスタン料理もハラルフードもない日本での食事情

サマルカンド最大の観光スポット、レギスタン広場。写真=本人提供

サマルカンド最大の観光スポット、レギスタン広場。写真=本人提供


アクマルさんは大学進学を機に来日し、日本在住13年になるが、子供の頃は日本についてほとんど何も知らなかったという。


「実は、生まれはウズベキスタンの隣の国、タジキスタンです。当時はソ連時代で、タジキスタンとウズベキスタンはひとつの国という感覚だったし、文化的にも似てるんですよ。サマルカンドに移ったのは子供の頃。両親の出身地だったんです。

大きなモスクとか、サマルカンドブルーと呼ばれるタイル張りの建築が有名。シルクロードの交差点ということもあって、タジク(タジキスタン)人も多いし、日本人のようなアジア系もヨーロッパのような顔立ちの人もいますよ」(アクマルさん、以下同)。


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さまざまな民族が当たり前のように交わる環境で育ったからか、子供の頃から貿易に興味があったという。学生時代は語学にも注力し、今では6カ国語を操るまでに。

そんなアクマルさんは、首都タシケントの大学を出たのち、海外で経済学を学ぶため、日本への留学を決意した。が、実はソウルの大学院にも受かっていたという。

「ウズベキスタンと韓国は関係が深いんです。ウズベキスタンには朝鮮半島にルーツのある人も多く暮らしているし、韓国でもウズベキスタン人街があるほど。大学も提携していたのでソウルの大学を受けたけど、当時の韓国には知り合いがいなかった。でも、日本にはたまたま友人がひとり留学していたんです」。

2011年の冬に来日し、語学学校、大学院へと順調に進学したのだが、イスラム教徒である彼にとってネックとなったのが食べ物だった。



「今では日本にもハラルフードが増えたけど、当時は本当に少なかった。食材を買っても簡単なものしか作れないし、外で食べるのはケバブやインドカレーがほとんどだったかな。ひとり暮らしには慣れていたけど、ご飯には困ってましたね」。
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故郷のご飯を求め、日帰りで韓国まで行く生活

日本で故郷のご飯にありつく機会はなかったが、お隣の韓国には本場のウズベキスタンレストランが多くある。大学院生時代は足繁く韓国に通ったという。


「当時は韓国とウズベキスタンの直行便が1日2回あったので、サマルカンドの焼き立てのナンがその日のうちにソウルで買えたんですよ。良く行くからか、入国管理の人には驚かれましたね(笑)」。

サマルカンドテラスで提供しているナン。

サマルカンドテラスで提供しているナン「クルチャナン」350円


ナンはウズベキスタンの主食でもあるブレッドで、アクマルさんにとって欠かせない存在。

「ナンといっても、インド料理のナンとは別物でしょ? ウズベキスタンの中でも地域ごとに味や作り方が違うけど、サマルカンドのナンはあの土地でしか作れない。現地ではタンドーリ(窯型オーブン)で作るけど、生地がぎっしり詰まっていて、ひとつ1.5kgくらいある」。

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この味を求めて日帰りで韓国へ行ったことも多々あったという。そうするうちに、「いつか日本でレストランを開きたい」と思うようになった。

撮影時にお店で食事をしていたウズベキスタンからの留学生

撮影時にお店で食事をしていたウズベキスタンからの留学生


レストランの立ち上げを夢見ながらも、大学院の卒業後は、当初の目的である貿易関係の仕事をはじめた。日本とウズベキスタンを繋ぐ自身の会社を立ち上げたのだ。

「中古タイヤの輸出などもしていました。それと並行して、2016年頃には、ちょうどウズベキスタンからの留学生も増えていたので、日本で留学生をサポートする仕事も始めました。僕が留学した頃は友人とふたりだったけど、その頃には年間50人くらいが日本に来るようになりましたね」。

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