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児童全員が移住者

現在通う172人の児童全員が移住者で、そのうち7割は県外出身者だというが、創立時から家族で移住して入学してもらうことが前提だったと中正雄一理事長は言う。それにもかかわらず、入学希望者は増え続けている。

関東を中心に188(2024年3月時点)の保育施設を持つグローバルキッズ社の代表取締役社長であり、学校法人茂来学園理事長を兼務する中正氏は、もともと「大学までやろうと宣言して起業した」という。「子どもたち一人一人を丁寧に、大事に見ていきたい。自分たちが0歳から見てきた子たちを大人になるまで見たいという夢があった」。

2019年4月に大日向小学校、一昨年4月には小学校の隣に大日向中学校を開校。2025年には同じ地区内に高校の開校も目指す。いずれもこの町で廃校になった公立校の校舎を再活用している。

最初は地元の人たちに受け入れてもらうことが課題だった。既に廃校になっているとはいえ、地域の人々にとって「親の代から通っていた学校を何に使うんだ」という不安が漂い、良い雰囲気とは程遠い状況だったという。



そんな中、「二回目の説明会で真ん中に座っていた年配の方が、『夢だ!俺らの夢だ!学校を作ってくれるのはいいことじゃないか』と言ってくれてから雰囲気が変わりました」。

その後、準備期間を経てついに開校の報告をした日は、40〜50人もの町民が集まってくれていた。「『開校します』と言った瞬間にみんなが拍手してくれて、泣きましたね。ああ受け入れられたんだなあと思って。やっぱり地域の人の応援がないと学校は開校できないので」と中正理事長は言う。「ここは昔、大日向小学校だったんです。それが、佐久東小学校になって。僕らは大日向小学校っていう名前に。学校の名前も地域の人たちと考えました」

現在、旧佐久東小学校の卒業生が教職員に一人いるそうだ。彼女が中心になって、当時の校歌を子どもたちに教え、新たに生まれ変わった大日向小学校の開校式で歌うことになったという。

「児童全員で歌ったとき、来てくれていた町の人たちがみんな泣いていました。おじいちゃんおばあちゃんが、自分たちが昔歌っていた歌をまたこうやって歌えることに、ありがたいって言ってくれた。びっくりしました、みんな歌えるんですよ。町の人たちがみんな一緒に歌っている姿に、本当に感動しました」

学校法人茂来学園理事長 中正雄一さん

学校法人茂来学園理事長 中正雄一さん


中学生のとき、学校に行けなくなった経験があるという中正理事長は、「悩んでいるときに『それでいいんだよ』と言ってくれる人がいるだけで、どれだけ気が楽になるか」と語る。「一緒に働いてくれる先生方が、ただ教えるだけではなく、子どもたちがその人らしくいられるように寄り添っていける人たちであってほしいと思っています」

「子どもがまずは自分のことを大切だと知る、その順番が大事。誰かから大切にされないと自分が大切な存在だとわからない。保護者や学校が一人一人を愛し、子ども自身が自分は大切な存在だと理解したら、他者との関係もうまく築いていけると思います」


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