壁で仕切らない、風通しの良い開放的な空間 方程式2
リビングダイニングは、開放感あふれる吹き抜けに。「家族の顔を見ながら暮らしたい」というご夫妻の声を受け、仕切りをほとんど設けず、2階部分にあたる両サイドにロフトが設けられました。
「平屋というイメージをお伝えしていたので、はじめはもっと天井が低かったんです。でも中途半端に2階部分のスペースが狭くなるのはもったいないねという話になり、仕事ができたり、子供達が過ごしたりできるよう天井高を上げてもらいました。」
階段からつながるほうは友人家族が訪ねてきてくれたりするとゲストの宿泊スペースに、ハシゴを使って登るもう片側は、功さんの仕事スペースです。
「子供たちがもう少し大きくなったら部屋を必要とする時期も出てくると思いますが、その期間もそんなに長くないので、その間だけ何かしらの方法で仕切ればいいねと話しています。この際、そんな時期が来たら小屋でも建てる?みたいな。子どもたちが独り立ちしたあとは夫婦2人で過ごすわけですから、そんなに部屋は必要ないよねと」
「鉄製の階段は、設計士さんの提案でした。S字を描くようにあがっていく踏み板のフォルムと素材感が、木をメインに使った空間のアクセントになっていますよね」
「温もりある木と、薪ストーブとのバランスも気に入っています。ストーブに合わせて、片側の壁面は熱が伝わりにくいタイルに。横には、割った薪を屋内へ搬入できる小さな入り口も作ってもらいました。」
オーストラリアで出会ったパンとファームスタイル 方程式3
奥さまこだわりのキッチンは、家のなかでもっとも明るい南側に。なおかつ、家族の顔を見渡せるようオープンキッチンを採用しています。
「以前住んでいた古民家のキッチンは、北側でリビングと仕切られていたんです。私たちは友人を招いてお酒を飲むのも好きなので、この家はちゃんとキッチンに立っている人も一緒に楽しめる設計にしたかった」とは、奥さまの裕子さん。
毎週金曜日はパン店『KUJIKA The Oven』としても機能しているため、営業中は居住スペースと仕切ることができるよう、ポリカーボネートのスライドドアを設置。柔らかな印象かつ、開け閉めしやすい軽さも気に入っているそう。
そもそも設計段階から、パン店を営むことは決まっていたとか。このきっかけも、オーストラリアでのファームステイでした。
「泊まっていた家のオーナーさんが、『一緒にパンを焼かない?』と誘ってくれたんです。そのときに、焼きたてのパンってこんなにおいしいんだ! と感動して、自分でやってみようかなと。オーナーさんに教えてもらったレシピ本をみながら、ひたすら独学でパンづくりを練習したんです。まずは毎週金曜日だけ、小さくはじめてみました。定番のカンパーニュやバゲット、デニッシュなども焼いています」(裕子さん)
一方の功さんは、畑仕事と養蜂も日課です。「庭の半分くらいは果樹と野菜畑なんです。とにかく毎日忙しい!」と笑みがこぼれます。
「子供たちが学校に行ってから、海に出かけられそうならサーフィンをして畑に出て、仕事をして、 という毎日です。果樹の管理もありますし、引っ越してきた翌年から養蜂もはじめたので、何かしら暮らしに紐づいたことを常にやっていますね」
「家の南西側にあるスペースは、サーフトリップで訪れた宮崎にあるカフェから影響を受けて設置しました。パン屋の営業日はお客さまに庭や向こうに見える海を眺めながらくつろいでいただいています」
裕子さんのパンと、功さんの畑仕事もひとつながり。
「いつか、パンに使う季節ごとの副材料の多くを自家製にできたらいいなと。その気持ちが畑仕事のモチベーションになっているんですよ。好きなことをしながら、目標を持って自然と暮らす。この家ができたことで、そんな理想の生活が叶いました」
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