連載「業界人!スニーカーハンター」とは…… 業界で名を馳せる“スニーカーハンター”が狙う、今いちばん熱いスニーカーとは? OCEANSでもお馴染みの人気スタイリスト、平健一さんのアイデアからスタートしたこの企画。その忖度無用のセレクトが話題を呼び、スニーカー界隈がザワつき始めている。
今回のハンターは小島奉文さん。言わずと知れた東京屈指の、いや世界屈指のスニーカーショップ、アトモスのディレクターを務める人物だ。インスタグラムのフォロワー数は今や10万に届かんとする勢い。スニーカー好きはもちろんのこと、小島さんのポストには業界関係者も目を光らせているのだ。
小島さんのセレクトやいかに? それはニューバランス、アディダス、ナイキという超王道ブランドの、絶対外さない一足なのであった。必見。
業界の“スニーカーハンター”たち
| 平 健一 スタイリスト。OCEANSでお馴染みのスニーカー賢人。1990〜2000年代の“青春の一足”に抱く思いがほとばしる。本企画のナビゲーター役。 instagram @runrun1980 |
| 小島 奉文 アトモス ディレクター。世界からマニアたちが表敬訪問するスニーカーショップ、アトモスのキーマン。紹介してくれるスニーカーはすべて「今絶対注目すべき一足」。発する言葉の説得力が違う。instagram @koji198139 |
| 草賀 雄介 プレイグラウンド ディレクター。古着とスニーカーに浸かった学生時代、アパレル企業を転々とした社会人生活を経て、2018年、代々木公園に「プレイグラウンド」をオープン。instagram @yusuke_kusaka |
ニューバランスからの刺客「1906」
平 さあお待たせしました。今回のハンターはこちら、アトモスの小島奉文さんです。この企画は動画も回していますが、オーシャンズのYouTubeには初登場なんですよね? 意外だなあ。既に出演済みかと思っていました。
小島 初めてなんですよ。よろしくお願いします。実は昨日までマニラにおりまして……先ほど帰国しました。
平 「アトモス フィリピン」のオープン(3月26日)ですよね。おめでとうございます!
小島 ありがとうございます。フィリピンもそうですけど、東南アジアはいいですよ。これから盛り上がる感じがひしひしと伝わってきます。スニーカーは今や、世界共通言語ですね。
平 本当ですね。さて、今日はどんなスニーカーを持ってきてくれたんですか?
小島 前回の草賀さんのスニーカーがかなり濃かったので、プレッシャーを感じます(笑)。アトモスにはほぼ毎日新作が到着するのですが、その中からこの春おすすめのものを厳選して持ってきました。どれからいきますか?
草賀 ニューバランスを見てみたいですね。色がきれいだな〜。
平 これ、欲しくてずっとググってたやつだ!(笑) この色、日本にないんですよね。
小島 それが発売されることになったんですよ。ニューバランスというとメイド・イン・USAの「990」のイメージが強いですよね。でもここ3、4年でこの「1906」と、「2002」っていうモデルの人気がすごいんです。
平 値段も安いよね。
小島 税込み1万9800円。ソールは「2002」を踏襲して、そこに新しいアッパーを乗せているんです。
平 ガッチャンコ系、ニコイチ系ね。
小島 いや平さんその言い方(笑)。ソールを開発するのにはすごくコストがかかるんですよ。サイズごとに型を作らなくちゃいけないから。だから完全な新作って、気軽に生産できない事情があるんです。
草賀 素直に、欲しいですね。
小島 ピックアップした理由をひと言で言えば、Y2Kファッションの台頭です。2000年前後のテイストが若い人たちに注目されていますので。私も含めたマニアやコレクターたちが好むタイプではありません。でもこの辺りの流れを、OCEANSのユーザーの皆さんにも知っておいてほしいんですよ。
ただ、単に今のトレンドに乗っかるだけじゃ売れない。スニーカーで言えばレトロとニューのバランスが大事だと思うんです。
平 その点でこの「1906」はいいよね。レトロチックでもあり未来感もある。いい意味でニューバランスらしくないスニーカー。
草賀 平さんからも指摘がありましたが、価格がいい。私が企画しているPGのスニーカーも、高額すぎない「スニーカーらしい価格」にこだわっています。好感度高いですね。
平 USA製の「990」は今、3万円台中盤〜4万円近くしますものね。これはファッション好きの人たちも買うだろうな。
小島 「2002」のソールは履き心地も最高。「Nロック」(Nのロゴに通したシューレースによりサドル部のホールド性をアップ)を搭載しているので安定感も抜群です。
草賀 あ、気づかなかった! 通ってる!
平 草賀さんはヴィンテージハンターだから、新しい機能に驚きがち(笑)。
小島 これだけ多くのパーツを使ってこの価格というのもすごい。いわば“採算度外視モデル”です。
近年ニューバランスは世界的にも人気が上がってきていて。「990」や「996」といったクラシックな定番モデルに加えて、新作もちゃんと売れている。デザイナーが変わったんですよね。もちろん、大谷翔平効果もあると思います。
平 大谷翔平は普段は「990」履いてるよね。そういえばこないだ奥様が「90/60」を履いてるのをテレビで見ました。僕も持っています。出た当初は人気のないモデルだったけど!
小島 今や「90/60」も若い人たちを中心にかなり人気が高いですよ。もし「990」の大谷翔平モデルが出たら、いくら高くても即完売でしょうね。ニューバランスさん、出す前に教えてくれないかな(笑)。
平 僕ら世代が若い頃は、ニューバランスは「おっちゃんが履くブランド」というイメージだったけど、いろんな意味で、ちゃんと新しくなってるよね。
草賀 えっ、昔はそんなイメージだったんですか? 確かにお二人は、私より少し若い世代ですが。
小島 僕らが若かった90年代当時は、ニューバランスはビームスやユナイテッドアローズの、お洒落店員さんが履いているイメージ。トラッドな、大人のスニーカーだったんです。“ストリートのスニーカー”ではなかったですよね。
平 脱線するとキリがないので、このへんでやめておきましょう(笑)。
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