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仕事としてのメリットは?

「運転に慣れた人であれば特に大きなストレスはないのでは」と大木さんは言う。ただし、ドライバーが今後増え続けるかと尋ねると、「その点では疑問も感じている」とも続けた。

「本業の就労時間が40時間を超えるとライドシェアで働けないので、前提として会社員の副業としては難しい。週20時間の勤務時間の制限、“短すぎる”営業時間が撤廃されない限りは、ドライバーが大幅に増えることは考えにくいです。最も稼げる金曜日の深夜帯を中心に今後も働いていく予定ですが、時間に抵抗がない人であれば客単価が見込めるこの時間に集中するでしょう。私個人の希望としては、深夜帯でやるならば時給5000円、日給1万5000円の収入が最低限の続けるラインかな、とも感じています」

日本型ライドシェアの出発式には、河野太郎規制改革担当大臣や斉藤鉄夫国交大臣ら政治家も顔をみせた。その中で河野大臣は「順次アジャイルしていくことが大切だ」と強調し、斉藤大臣も「全国でできるだけ早くスタートさせたい」と意気込んだ。5月からは大阪市や札幌市、福岡市などの大都市圏でも解禁され、さらに新たな地域が参画することも予測される。

今後はライドシェアの全面解禁を行うかどうか、日本型ライドシェアの経過を受け、6月に議論が本格化する。しかし、今の状態では正確な状況判断が行えるだけのサンプルやデータが足りていない現実があることも、取材を通して見えてきた。

そして長期的な移動サービスとして根付かせるには、ドライバーの確保という喫緊の課題に加え、彼らが定着するだけの材料も必要となってくる。

日本型ライドシェア出発式の様子(筆者撮影)

日本型ライドシェア出発式の様子(筆者撮影)


全面解禁に向けた課題

これは全面解禁になったとて、同様のことがいえる。当然だが、同時に地域ごとに他の公共交通との兼ね合いも見極める必要があり、国交省や規制改革推進会議の舵取りには注視していきたい。それでもここ2カ月ですべてを判断するのはあまりに性急であり、どうしても精度は低くなるとも感じてしまうのだ。

「結局中途半端な形でライドシェアを進めるのは、誰にとっても得にならないから」

事業者からも政界からも、去年さんざん聞かされたこの言葉が今も強く印象に残っている。そして、その懸念が現実に起こりえる可能性も感じるのだ。日本型ライドシェアの正しい評価を下すには、まだ相応の時間を要しそうである。


栗田シメイ=文
東洋経済オンライン=記事提供

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