OCEANS

SHARE

  1. トップ
  2. 1台の車に乗るのは平均1.3人。 i-ROADを手掛けたトヨタ出身者が開発した超小型EV「Lean3」の正体

2024.03.13

1台の車に乗るのは平均1.3人。 i-ROADを手掛けたトヨタ出身者が開発した超小型EV「Lean3」の正体

2025年半ばの発売に向けて開発が進められているLean Mobilityの「Lean3」(筆者撮影)

2025年半ばの発売に向けて開発が進められているLean Mobilityの「Lean3」(筆者撮影)


当記事は「東洋経済ONLINE」の提供記事です。元記事はこちら

カーボンニュートラルが叫ばれる中、自動車業界ではEV(電気自動車)シフトの波に対してHEV(ハイブリッド車)が盛り返しつつあるなどの動きがある。でも、もっと“根本的なこと”を忘れてはいないだろうか。

乗用車の乗車定員は4〜5人が一般的なのに、実際に乗っているのは平均1.3人。もちろん、ときには定員乗車もあるだろうし、「いざというとき」を気にしてミニバンなどを選ぶという日本人らしさは認めるけれど、モーターで動かそうがエンジンで動かそうが、乗用車そのものが、効率の悪い乗り物なのである。

1.3人にふさわしい乗り物が提供できれば、スペースもエネルギーも節約できるはず。

そんな実情を踏まえて生まれたのが、日本と台湾のアライアンスEVメーカー、Lean Mobility(リーンモビリティ)と、 都市型超小型EVの「Lean3」である。


CEOはトヨタで「i-ROAD」を手掛けた人物


CEOを務める谷中壯弘(あきひろ)氏は、小型モビリティ開発のオーソリティだ。

これまでにトヨタ自動車の革新的な3輪超小型モビリティ「i-ROAD」「ジブリパーク(愛知県長久手市)」を走る「APMネコバス」のベースにもなったユニバーサルデザインの低速電動モビリティ「APM(アクセシブル・ピープル・ムーバー)」などを手掛けてきた。

2013年に発表され、2015年からモニタープロジェクトが行われた「i-ROAD」(筆者撮影)

2013年に発表され、2015年からモニタープロジェクトが行われた「i-ROAD」(筆者撮影)


その経験を生かして、2022年にトヨタから独立。自ら創設したのがLean Mobilityで、愛知県豊田市にあるLean Mobility株式会社と、台湾の台北および桃園にあるLean Mobility inc.から構成されている。 

車名にあるLeanには、車体を傾けて旋回するモビリティのメーカーであるとともに、都市の移動形態に沿った「無駄のないスリムなモビリティを提供する」という意味を込めているという。

同社で注目したいのは、ビジネスをしっかり見据えた組織づくりをしていることだ。

エンジニアリングだけでなく、マーケティングやセールスに精通したメンバーが集結し、量産に向けた台湾のサプライヤー候補も決定済み。台湾の自動車関連企業連合から28億円もの出資も受けている。

そんなLean Mobilityが第1号車として開発したのがLean3で、量産開発の最終段階に入っている。車名の末尾にある3は、3輪であることを示したものだ。

市場投入は2025年を予定しており、まず台湾、続いて日本やヨーロッパに展開し、5年目までに5万台以上の生産を見込んでいるという。 

前2輪後1輪の2人乗り。車体後部の上にあるルーバー部はエアコンユニットが格納されている(筆者撮影)

前2輪後1輪の2人乗り。車体後部の上にあるルーバー部はエアコンユニットが格納されている(筆者撮影)


写真を見て、かつて谷中氏がトヨタで開発に携わったi-ROADに似ていると思った人もいるだろう。そのとおり、同氏はi-ROADについての権利関係をトヨタから引き継いで、会社を立ち上げたのである。

このエピソードを当人から聞いて、筆者は迷うことなく取材を申し込んだ。

トヨタがi-ROADの市場化を見据えて、東京都内在住者に1カ月間使ってもらうという「オープンロードプロジェクト」に混ぜてもらい、この個性的な超小型モビリティと過ごした経験を持っているからだ。

当日は、コンセプトカーの開発などで有名なフィアロコーポレーションの東海クリエイティブセンター内にある同社の国内拠点で、量産開発の実車に触れる機会に恵まれた。

フィアロコーポレーションの施設内にある日本拠点(筆者撮影)

フィアロコーポレーションの施設内にある日本拠点(筆者撮影)



2/4

次の記事を読み込んでいます。