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「kiiks」は4月26日〜5月1日には渋谷パルコにてポップアップイベントを開催した。/Photo by Daiki Tateyama

「キークス(kiiks)」は4月26日〜5月1日には渋谷パルコにてポップアップイベントを開催した。/Photo by Daiki Tateyama


井植 多方面で活動して、発信しているというのは、希子さんのひとつの強みですよね。いろんな要素をお持ちです。今後さらに増やしていきたいと思っていることはありますか。

水原 キークス(kiiks)で、現在発売しているバームは、そのまま食べられるレベルの自然由来100パーセントなんです。そこで、つくるプロセスもしっかり見せていきたいと考えています。消費者にダイレクトに伝えたい気持ちがあり、ワークショップをやったり、ゴミ拾いやアップサイクルのイベントを企画したり。実際に買ってくださる方と会ってお話できる機会を設けたいし、一緒に体験したい。

井植 いいですね、いろんな要素を掛け合わせることは、大事だなと思うんですよ。最近の科学もそうなんです。科学で解決できなかったことって、これまでたくさんあるじゃないですか。国連も「国連海洋科学の10年」というキャンペーンを行っていて、新しい科学を打っていこうとしています。さまざまなジャンルを組み合わせてこうよっていう取り組みです。

水原 なるほど。

CAP:実施計画書/出典:持続可能な開発のための国連海洋科学の10年公式サイト

実施計画書/出典:持続可能な開発のための国連海洋科学の10年公式サイト


井植 希子さんの活動と共通していると思うのは、ひとつのサブジェクトだけじゃなくて、何か違うものと掛け合わせて、新たな価値観を創出していくところ。そこから新たな方向性が見えてくるというのは、すごくワクワクします。

水原 そうですね。今、美の基準が大きく変わったなと、この業界にいてすごく思います。見た目よりも、どういう人なのか、どういうことを発信しているのかという部分に注目する世の中になってきている。モデルも一昔前だったら最低でも170㎝以上、痩せていることが基準になっていたけれど、今はもう関係ない。いろんなスタンダードや概念がどんどん壊されて、変化していっています。大きな変化の渦中にいることをすごく感じるんです。実のところはどうなの?っていう風に、大きなクエスチョンマークで問われる世の中に私たちは今生きている。

井植 希子さんだから見えるところがありますね。

Photo by Daiki Tateyama

Photo by Daiki Tateyama


水原 キークスのプロダクトには、ケミカルなものをいっさい入れません。ナマなので、使用期間が短いし、たくさんはつくれません。このことをネガティブに捉える方もいらっしゃるんです。例えば大きな商社さんとは取引できなかったりします。

でもキークスとしては、使用期間が短いということをもって、逆に問いたい。それって、どういう意味なのか。大量に作れないのは、それが本来の姿であり、ありのままだから。昔の人たちっていうのは、それが当たり前で生きてきた。

井植 そうですよね。アップサイクルも然りで、昔の人はそうはいわなくても、既にやっていたことですから。



水原 ちょっと前に、青森で裂織を体験したんです。これも昔からあるんですけど、アップサイクル以外の何物でもないですよね。使わなくなった浴衣などの生地を裂いて、混ぜて、織っていきます。ちょっとしたラグになったり、バックにしたりとか、いろいろできる。教えてくれたおばあちゃんがおっしゃっていたことが印象的で、「元々あったよりもさらに美しく生まれ変わらせるっていうことがポイント」だと。

私が考えていることと一緒だ!と思いました。だから私も学んで、今の若い人たちに格好いいでしょ!って見せたい。昔からあるものだけど、まるで新しいものであるかのように、格好いいとか素敵だと思ってもらえることが大事だと思う。

井植 いい話ですね。ファッション、音楽、自然、海の底と、いろんなところにありながら、それがひとつにまとまっているところが希子さんの魅力。等身大でいながら、すごく強いメッセージを発信している。それをみんなとシェアするところに原動力がありますね。

Photo by Daiki Tateyama

Photo by Daiki Tateyama


水原 今、海外に住み始めて、改めて自分のルーツは日本なんだなって思っています。伝統的な技術を持つ職人さんが少なくなっている話もよく聞きますので、そういうところもピックアップしたいです。今って考えれば考えるほど大変だし、日々のニュースを見ていても苦しい。もっと勢いよくやらなきゃいけないのかなとか、焦りを感じる時もありますが、それこそ持続可能にしていくには、やっぱり私自身も楽しむということを大切にしたい。自分のメンタルヘルス的にもすごく大事だと思うから。自分だけで全部背負い込むのではなくて、いろんな方面で真剣に考えてらっしゃる方がいらっしゃるので、みんなで楽しみながら、いろんな要素を交えて、向き合っていくっていうことが、いちばん持続可能なのではないかと思っています。

井植 これからのさらなるご活動を楽しみにしています。

水原 今日もいろいろ学びがありました。井植さんのNGOの活動についてもまたの機会にぜひ教えてほしいです。ありがとうございました。


ファッション、音楽、自然、海。持続可能な未来に向けて、すべてはつながっている。みんなで楽しく、いろんな要素を交えて向き合うことが大切だ。

合六 美和=取材・文

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