『失敗しない読書術』の著者・名もなき読書家さんにおすすめの本を聞く本企画。
新生活にはすっかり慣れ、悩みも出てくるこの時期。オーシャンズ世代ならば、部下の相談に乗る機会も多いはず。そこで今回は、本の中から心に響く言葉を見つけるのが巧みな読書家さんに、「仕事で悩む部下に伝えたい」名フレーズを厳選してもらった。
話を聞いたのは…… 名もなき読書家●情報クリッピングマスター。京都市生まれ。立命館大学産業社会学部卒業。2005年から現在まで、クリッピング業務に従事。プライベートでも読書家として、これまでに5000冊を読破。2023年に『失敗しない読書術』(フォレスト出版)を出版。Amazon インフルエンサー・プログラムのメンバーでもある。趣味は読書とランニング。Instagram@no_name_booklover Voicy:名もなき読書家のホントーク!
① 『羊と鋼の森』(文藝春秋)
名フレーズ:「経験や、訓練や、努力や、知恵、機転、根気、そして情熱。才能が足りないなら、そういうもので置き換えよう」
宮下奈都『羊と鋼の森』(文藝春秋)
物語のあらすじ
高校生の外村直樹は、たまたま学校のピアノの調律現場に立ち会い、その音に生まれ故郷の森の匂いを感じて魅了される。音楽の才能もクラシックへの興味もなかった外村だったが、このとき出会った調律師・板鳥宗一郎に憧れ、自分も調律師になることを決意する。やがて調律の専門学校を卒業した外村は、めでたく板鳥と同じ楽器店に採用されるのだったが……。
これは2016年の本屋大賞とった作品です。山崎賢人さん主演で2018年に映画化されているので知っている方も多いかもしれません。大きな事件は起こらないけれど、文章がとても美しく、じんわりとしたものが心に残る作品です。
「経験や、訓練や、努力や、知恵、機転、根気、そして情熱。才能が足りないなら、そういうもので置き換えよう」というのは、駆け出しの調律師になった主人公がある家庭に出向いて調律した時に「別の調律師にやり直してほしい」とダメ出しされてしまったあと、自分自身に言い聞かせるフレーズです。
春から新しい仕事や新たな部署、ポジションに就いて、自分には向いてないかもしれないと思ったり、やってみたけれど思っていたのと違った、という人もいるかと思います。
主人公の青年は自分の力不足で壁にぶつかったときに、自分には才能がない、と諦めずに「才能が足りないのなら他のものに置き換えよう」と自分で自分に言い聞かせるのです。
名もなき読書家さんのInstagramで紹介した投稿。
新しい仕事に就いて、才能がない、向いていないと思っている人も諦めるほど努力をしているのかと、自分の仕事に対する姿勢を顧みるきっかけになるんじゃないかと思います。読めばきっと、この主人公のように、まず自分にできることをコツコツ積み重ねてやろうと思えてくるのではないでしょうか。
紹介した台詞のあとに、「才能とは人と比べてずば抜けて何かができるのではなくて、物凄く好きだという気持ちなのではないか」ということが書かれていて、本当にそうかもしれないと思いました。これを読んで、私には読書の才能はあるのかな? と自分に問いかけました。
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